米国内国歳入庁(IRS)は2025年3月25日、2024年度の事前確認制度(APA)に関する統計データを公表しました。このデータには、APAの申請・締結件数、締結相手国、合意までの期間、採用された算定方法などが詳細に示されています。
1. APAとは
APAは、Advance Pricing Agreementの略で、将来の一定期間における関連者間取引にかかる移転価格算定方法について、事前に課税当局と合意する手続きです。なお、APAには、一つの税務当局との合意を得る「単独APA」、二つの税務当局との合意を得る「二国間APA」、三つ以上の税務当局との合意を得る「多国間APA」の種類があります。
2. 2024年度統計データのハイライト
- 2024年のAPA申請件数等
申請件数…169件
締結件数…142件
年末時点のAPA未処理件数…560件
- APAの合意に要した期間
中央値…33.5カ月
- 締結された二国間APAの相手国の内訳TOP3
1位…インド29%
2位…日本23%
3位…イタリア11%
なお、2023年までは常に日本が最多を占めていましたが、今回初めてインドが日本を上回っています。
- 二国間APAの申請件数TOP3
1位…日本32%
2位…インド26%
3位…カナダ10%
- もっとも用いられている算定方法
CPM(利益比準法)/TNMM(取引単位営業利益法)…全体の78%
- APA対象期間
5年が56件、6年が24件、7年が24件で、平均は6年。
- その他補足
締結された二国間APAの内訳は、外国の親会社とその米国子会社の間の取引が過半数を超えています。
3. APAの重要性の高まり
IRSは2000年からAPAの統計データを公表しており、2008年のリーマンショック、2017年の第一次トランプ政権による関税政策、2020年のコロナ禍など、経済に大きな影響を与える局面では、移転価格リスク回避のためAPAを活用する多国籍企業が増加する傾向が見られます。日本企業においても米国事業の規模拡大が進む中、過去のトランプ政権下の関税政策が示したように、不確実性の高い状況下では、移転価格における二重課税を回避する上でAPAの重要性は今後さらに高まるものと推測されます。
さらに、近年の大幅な為替変動や世界景気変動、訴訟リスク、サプライチェーンの再構築に伴うリストラクチャリングなど、予測不能な問題が多発する中、APAは日本企業にとって有効なリスク管理ツールの一つとして機能すると考えられます。
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