事例紹介

【事例紹介】中国送金事例① 中国勤務時代の給与で形成された預金が遺された場合の送金手続き

Customer Profile

父(日本人)が他界したため、遺産整理を行っていたところ中国の預金通帳・キャッシュカードを発見した。父は1995年から2003年の8年間、勤務先の中国子会社に出向しており、中国国内において給与を受け取っていたため、当時の給与が原資であると想定される。記帳は2003年までとなっており、最終記帳残高は約200万元であった。(2003年以降の入出金状況及び現時点の残高が不明)相続人は私(長男)、二男の二人であり、遺言はなかった。

中国勤務時代の給与で形成された預金が遺された場合の送金手続き  

ご相続人は父親が中国で働いていた事実は把握していたが、当時中国に有していた預金口座がまだ残っていることを知らなかった。国内財産のみでも基礎控除を超えており相続税申告は必須であったため、相続税申告と併せて中国における預金の解約・送金支援のご依頼を受けた。

概要 

課題 

  • 口座の暗証番号が不明である
  • 通帳の最終記帳が相当古く、相続開始時点の預金残高が明確でない
  • ご相続人は中国へ渡航するのは困難であり、かつ中国語ができない状況
  • 当時父親が勤めていた中国の会社の詳細資料は手元に無い

役務提供内容

  • 預金形成経緯の調査
  • 送金に必要な資料の収取
  • 日本語資料の中国語翻訳業務
  • 相続開始時点の残高証明書の取得
  • 送金実施手続き

≪ 役務提供詳細 ≫ 

  1. 現状手元にある資料の確認
  2. 中国の銀行へ遺産送金必要資料の確認
  3. 中国の勤め先についてリサーチ及び問い合わせ
  4. 上記中国の勤め先の管轄税務局にて納税証明書の取得
  5. 納税証明に記載された給与支給額の合計が最終記帳残高を超えていることを確認
  6. その他必要資料の整備
  7. 必要資料のうち日本語資料を中国語に翻訳、領事館認証サポート

≪役務提供のポイント≫

1. 中国の銀行手続き

銀行・支店によっても手続きが異なるため、銀行名、支店、口座番号を把握する必要がある。また、窓口担当者によって対応や必要資料が異なる可能性があるため、手続き完了まで同一の担当者とやり取りすることが望ましい。人事異動の時期は注意が必要。

2. 預金原資の確認

被相続人がどのようにして(給与所得、不動産売却収入や株式の譲渡収入等)中国における資産を形成したかを確認する必要がある。そのうえで、その収入を稼得した際に中国で納税をしたことを示す書類(以下、「納税証明書」という)を入手しなければならない。

中国で収入を稼得した際に納税をしていない金銭については、不当に形成された財産である可能性が高いことから、銀行で送金が制限される可能性がある。そのため、一般的に中国から中国国外へ送金する際には、その送金原資に係る納税証明書の提出が銀行で求められる。例えば、給与所得で稼得形成された金銭であれば給与に係る納税証明書、不動産売買や株式取引で稼得形成された金銭であれば、その譲渡利益に対する納税証明書などが必要。

3. 納税証明書の取得

  • 給与収入に係る納税証明書
    給与収入の納税証明書の取得にあたっては、一般的に雇用契約書または離職証明書等、会社に勤めていたことを証明する書類を準備して、その会社の管轄税務局へ問い合わせが必要となる。本件、被相続人が勤めていた中国の会社の詳細資料は手元に無い状況であったが、会社自体は存続していたため、その会社に問い合わせて離職証明書を取得することができた。万が一、勤めていた会社が消滅していた場合には雇用契約書または離職証明書の取得は困難である。
  • 不動産売買や株式取引に係る納税証明書
    不動産売買や株式取引に係る納税証明書の取得にあたっては、一般的に取引契約書・請求書等、取引を証明できる書類を準備して、当時納税を行った税務局へ問い合わせが必要となる。中国では、契約書・請求書がないケース(口約束のみ)や、不動産登記変更も適切にできていないケースが散見される。
  • 納税証明書を取得できない場合
    納税証明書の発行に必要な資料を準備できない場合には、税務局の窓口担当者と直接交渉を行い、代替資料を依頼されるケースと発行不可と判断されるケースに分かれる。また、相当古い納税情報については、必要資料を揃えても税務局のシステム上、データ取得ができない等の理由により証明書の発行ができないケースがあるため注意が必要。納税証明書が取得できない場合には銀行窓口担当者に交渉するしかない。

4. 翻訳・認証

日本における遺産分割協議書や相続親族関係を示す戸籍等の書類は中国語へ翻訳し、中国領事館の認証が必要。認証手続きは公証人役場、外務省、領事館での手続きが必要であり、手数料が発生するため、事前に認証先に必要資料の確認をしておくとスムーズに手続きできる。代理人が手続きする場合には委任状や代理人身分証等の追加資料が必要となる。

5. 身分証明書

海外における身分証明書は一般的にパスポートを利用する。被相続人、相続人の身分証明について、パスポート原本の窓口提示で完了するケースと、パスポートコピー提出が必要なケースがある。パスポートコピーについても上記③と同様に中国領事館の認証が必要。

 


 

2021年3月3日(月)