非上場株式等の相続税の納税猶予制度における後継者役員要件の緩和

速報 令和3年度(2021年度)税制改正解説

1. 改正の概要

非上場株式等に係る相続税の納税猶予の特例制度について、中小企業経営者が高齢化している現状を踏まえ、後継者に係る要件のうち、役員要件を緩和する見直しが行われる(納税猶予の一般制度は、60歳未満を70歳未満とする改正のみ)。

後継者の役員要件

  改正前 改正後
原則 後継者が被相続人の相続開始の直前において特例認定承継会社の役員である必要がある。 同左(改正なし)
例外 先代経営者等である被相続人が60歳未満で死亡した場合には役員要件不要 先代経営者等である被相続人が70歳未満で死亡した場合には役員要件不要
  後継者が特例承継計画に特例後継者として記載されている者である場合には役員要件不要

 

図4-Aug-31-2023-06-32-51-9936-AM

2. 適用時期

大綱に記載なし

3. 実務上の留意点

  • 相続税の納税猶予の場合だけの改正であり、贈与税の納税猶予における後継者の役員要件は改正されない。
  • 先代経営者等が70歳未満であれば後継者の役員要件は不要となるが、(急な相続の場合も含め)納税猶予の特例制度の適用を受ける可能性がある場合には、従来からの要件通り、2023年(令和5年)3月31日までに特例承継計画の確認申請をする必要がある。
  • 職制上の理由などで後継者が対象会社の役員になれないようなケースでも納税猶予の特例制度の適用が受けられるようになるが、「相続発生の5ヶ月経過日においては代表権を有すること」という要件があることに留意する必要がある。
  • 納税猶予の一般制度においては次の留意点がある。
    ①改正点は、先代経営者等である被相続人が70歳未満(改正前60歳)で死亡した場合には後継者の役員要件は不要、という点のみである。
    ②特例承継計画の確認を受けていたとしても、納税猶予の一般制度を適用する場合(例えば承継が2028年(令和10年)1月1日以後になった場合)には、被相続人が相続時に70歳以上であれば、後継者の役員要件は必要となる。

4. 今後の注目点

  • 相続発生前に特例承継計画の申請は終えているが確認を受ける前に相続発生してしまった場合でも、後継者の役員要件を求めないこととなるか。
  • 適用時期について、いつからとなるか。

 

 

内容につきましては、「令和3年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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