不動産登記法の改正を受けた登録免許税の非課税措置の創設

速報 令和4年度(2022年度)税制改正解説

1. 不動産登記法改正の概要

(1) 相続登記の申請の義務化と相続人申告登記

① 相続登記の申請の義務化

  • 相続や遺贈により不動産を取得した相続人に対し、相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける

② 相続人申告登記の新設

  1. 3年以内に遺産分割が成立しない場合に、相続人が、登記官に対して、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、自らが相続人である旨を、相続登記の申請義務履行期間内(3年以内)に申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したものとみなす。申出を受けた登記官は職権で登記を行う。
  2.  相続人が複数存在する場合でも、法定相続人の範囲及び法定相続分の割合を確定することなく、特定の相続人が単独で申し出ることが可能(他の相続人の分も含めた代理申出も可能)。
  3. 正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料の罰則がある。

③ 相続人申告登記後に遺産分割が成立した場合

  1. 相続人申告申出後に遺産分割が成立した場合には、遺産分割によって不動産の所有権を取得した相続人に対し、当該遺産分割の日から3年以内に、所有権移転登記の申請をすることを義務付ける
  2. 正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料の罰則がある。

(2) 適用時期

相続登記の申請の義務化」及び「相続人申告登記の新設」については、2024年4月1日に施行。

(3) 施行日前の相続に関する適用

施行日前に相続が開始していた場合についても、登記の申請義務が課され、施行日とそれぞれの要件を充足した日のいずれか遅い日から3年以内に登記をする義務が生じる

 

【例】施行日のほうが遅い場合
図2-Aug-28-2023-06-02-20-6385-AM

2. 登録免許税に関する改正の概要

上記1(1)②の相続人申告登記に関する登記官による職権登記について、登録免許税の非課税措置を適用する。すなわち、3年以内に遺産分割が成立せず相続人申告登記と遺産分割成立後の相続登記が行われる場合でも、登録免許税がかかるのは1回である。

少額の土地を相続により取得した場合の登録免許税の免税措置が、次の措置を講じた上、2025年(令和7年)3月31日まで延長される。

  改正前 改正後
適用対象となる土地の範囲 ・市街化区域に所在する土地 ・市街化区域に所在する土地
・市街化区域に所在する土地
適用対象となる土地の価額の上限 10万円以下 100万円以下

<少額の土地を相続により取得した場合の登録免許税の免税措置>
相続登記が済んでおらず、現在の所有者が判明しない又は判明しても連絡がつかない所有者不明土地の増加は、公共事業の推進等の様々な場面において、円滑な事業実施への大きな支障となっている。そこで、市町村の行政目的のため相続登記の促進を特に図る必要がある一定の土地について、次の登録免許税の特例措置が設けられている。

登記の種類 本則税率 特例
土地の所有権の保存登記 0.40% 免税
相続による土地の所有権の移転登記 0.40% 免税

 

(2) 不動産取得税(以下、主な項目)

  • 土地の取得後に特例適用住宅を新築した場合の土地に係る減額措置(床面積の2倍(最大200㎡まで)相当額の減額)について、土地取得後の住宅新築までの経過年数要件緩和の特例措置が2024年(令和6年)3月31日まで延長される。
  • 新築の認定長期優良住宅に係る課税標準の算定において、1,300万円を控除する軽減措置が延長され、2024年(令和6年)3月31日取得分まで適用可能になる。

(3) 印紙税

不動産の譲渡に関する契約書に係る印紙税の税率の特例措置が2024年(令和6年)3月31日まで延長される。

契約書に記載された
契約金額
印紙税額
(本則)
印紙税額
(軽減措置後)
1万円未満 非課税 非課税
10万円以下 200円 200円
50万円以下 400円 200円
100万円以下 1,000円 500円
500万円以下 2,000円 1,000円
1,000万円以下 10,000円 5,000円
5,000万円以下 20,000円 10,000円
1億円以下 60,000円 30,000円
5億円以下 100,000円 60,000円
10億円以下 200,000円 160,000円
50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円
金額の記載がないもの 200円 200円

※:2024年(令和6年)3月31日までの間に作成された契約書に係る印紙税について適用される。

 

内容につきましては、「令和4年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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