暗号資産の期末時価評価等の課税に係る見直し

速報 令和5年度(2023年度)税制改正解説

1. 改正の概要

(1) 趣旨・目的

内国法人が保有する活発な市場が存在する暗号資産については、法人税法上、期末に時価評価し、評価損益は課税の対象とされている。
こうした取扱いは、担税力がない(資金がない)中で継続して保有される暗号資産についても課税を求めるものであり、国内においてブロックチェーン技術を活用した起業や事業開発を阻害していると指摘されていることから、期末時価評価方法等につき一定の見直しが行われる。

(2) 内容

① 評価方法

法人が事業年度末において保有する暗号資産は、原則時価評価の対象となるが、一定の要件に該当する暗号資産は、期末時価評価課税の対象から除外する。

 

  会計上 法人税法上
現行法 改正案
活発な市場が存在する暗号資産 時価法 時価法 時価法

以下の要件に該当する暗号資産 

① 自己が発行した暗号資産でその発行の時から継続して保有しているものであること。 

② その暗号資産の発行の時から継続して次のいずれかにより譲渡制限が行われているものであること。  
(イ)他の者に移転することができないようにする技術的措置がとられていること。  
(ロ)一定の要件を満たす信託の信託財産としていること。

時価法適用なし 原価法
活発な市場が存在しない暗号資産 切り放し低価法 原価法 原価法

(※1)帳簿価格と期末時点の時価との差額について評価損益を計上する方法。
(※2)現在、明確な基準なし。第490回企業会計基準委員会にて時価評価しない方向で検討中。
(※3)期末における処分見込価額が取得原価を下回る場合に、当期処分見込価額を貸借対照表価額とする方法。
(※4)期末時における適正な帳簿価額により評価する方法。

② 取得価額

暗号資産の取得価額の算定方法につき、以下の改正が行われる。

  会計上 法人税法上
現行法 改正案
➀ 購入した暗号資産 購入代価+購入費用 購入代価+購入費用 購入代価+購入費用
➁ 購入以外の暗号資産 明確な定めなし 取得時点の時価 取得時点の時価
うち自己が発行した暗号資産 発行に要した費用の額

 

③ みなし決済損益

法人が暗号資産交換業者以外の者から借り入れた暗号資産の譲渡をした場合において、その譲渡をした日の属する事業年度終了の時までにその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の買戻しをしていないときは、その時においてその買戻しをしたものとみなして計算した損益相当額を計上する。

④ その他

その他所要の措置を講ずる。

2. 適用時期

大綱に記載なし

3. 実務上の留意点

① 法人が保有する暗号資産のうち、自己発行や発行時から譲渡制限がなされている暗号資産については、法人税法上、期末時価評価の対象外となる。
② 自己発行・自己保有している暗号資産については、会計上、明確な基準が存在していない。会計基準委員会において、時価評価しない方針で検討中ではあるが、まだ結論が出されていない。

4. 今後の注目点

① 活発な市場が存在する暗号資産のうち、時価評価の対象とされないものの要件の詳細。
② 自己発行・自己保有している暗号資産についての会計上の取扱いの明確化。
③ その他所要の措置の内容。

 

 

内容につきましては、「令和5年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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