デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の見直し及び延長

速報 令和5年度(2023年度)税制改正解説

1. 改正の概要

企業のDX(デジタル技術を活用した企業変革)投資を促進するために令和3年度税制改正においてDX投資促進税制が創設された。今年度の改正では、現状不足しているデジタル人材の育成・確保に取り組むとともに、成長性の高い海外市場の獲得を含めた売上増加に繋がる「攻め」のデジタル投資に踏み切る企業を後押しするため、認定要件の見直しを行ったうえで、適用期限を2年間延長する。

【事業適応計画の認定要件】

  改正前 改正後

デジタル(D)
要件

① データ連携 
(他の法人が有するデータ又は事業者がセンサー等を利用して新たに取得するデータと内部データとを併せて連携すること)

② クラウド技術の活用

③ 情報処理推進機構が審査する「DX認定」の取得 
(レガシー回避・サイバーセキュリティ等の確保)

① 同左

② 同左

③ 情報処理推進機構が審査する「DX認定」の取得 
(レガシー回避・サイバーセキュリティ等の確保、デジタル人材の育成・確保

企業変革(X)
要件

① 生産性向上又は売上向上が見込まれる
・ROAが2014-2018年平均から1.5%ポイント向上 
・売上高伸び率≧過去5年度の業種売上高伸び率+5%ポイント

② 計画期間内で、商品の製造原価が8.8%以上削減されること等

③ 全社の意思決定に基づくもの 
(取締役会頭の決議文書添付等)

売上高が10%以上増加することが見込まれること

対象事業の海外売上高比率が一定割合以上となることが見込まれること

③ 同左

 

制度の概要は以下の通りである。

 

適用対象者及び要件 ①青色申告書を提出する法人
②産業競争力強化法の改正法の「事業適応計画」について認定を受けること(改正箇所)
③情報技術事業適応の用に供するために必要な情報技術事業適応設備を取得等し、国内にある事業に供すること
対象資産 情報技術事業適応設備となる下記の資産
・ソフトウェア
・繰延資産(クラウドシステムへの移行に係る初期費用等をいう。)
・機械装置、器具備品(上記ソフトウェア・繰延資産と連携して使用するものに限る。)
税制措置
(選択適用)
特別償却 取得価額×30%
税額控除 取得価額×3%(グループ外の事業者とデータ連携をする場合は、5%)
(注)カーボンニュートラルに向けた投資促進税制による税額控除と合計で当期の法人税額の20%を上限
投資限度額 対象資産の取得価額及び対象繰延資産の額の合計額のうち、300億円を限度
ただし、売上比0.1%以上の投資に限る。

 

2. 適用時期

2025年(令和7年)3月31日までの間に情報技術事業適応設備の取得等をして、国内にある事業の用に供した場合に適用される。ただし、2023年(令和5年)4月1日前に認定の申請をした事業適応計画に従って2023年(令和5年)4月1日以後に取得等をする資産については、適用されない。

3. 実務上の留意点

デジタル人材の育成・確保の要件、対象事業の海外売上高比率が一定割合以上となることが見込まれる要件の具体的な内容及び従前の要件の継続や廃止について確認する必要がある。

 

 

内容につきましては、「令和5年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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