オープンイノベーション促進税制の見直し

速報 2026年度(令和8年度)税制改正解説

1. 改正のポイント

(1) 趣旨・背景

スタートアップ企業への投資に一定の貢献をしているものと見込まれているオープンイノベーション促進税制について、適用期限の延長が行われるとともに、スタートアップ企業の出口としてM&Aの促進は極めて重要であることから、本税制のうちM&A型の制度の見直しを実施する。これにより、海外に後れを取っているスタートアップ企業へのオープンイノベーションの促進を図る。

(2) M&A型の制度の概要(改正前)

対象法人(制度適用法人)が一定のスタートアップ企業(発行法人)の過半数を有することとなった場合に、その取得価額の25%相当額を特別勘定として経理処理することで同額の所得控除(損金算入)ができる制度である。なお、一定の取崩し要件に該当した場合には、対応する部分の金額を益金に算入する仕組みとなる。

 

【イメージ図】

出典:経済産業省「オープンイノベーション促進税制(M&A型)の概要」

 

(3) M&A型の適用類型の拡大

存の制度では、発行法人以外の者から購入により株式を取得した場合には、発行済株式数の50%超を取得しなければ、M&A型のオープンイノベーション促進税制が適用できなかったが、一定の要件を満たした段階取得も対象とする改正が行われる。また、発行法人の成長発展が図られたことが明らかな場合において、対象法人と発行法人の間で合併が行われたときは、所得控除分の取崩しの負担を軽減する改正も行われる。

内容 M&A型
一括購入による取得
(一部改正あり)
段階的な取得
(改正により拡充)
対象株式 発行法人以外の者から購入により取得した株式 左記同様
取得価額の下限

【下限】
対象法人は大企業・中小企業問わず、7億円以上に引き上げ
(改正前:5億円)

【上限】200億円

【下限】
対象法人は大企業・中小企業問わず、3億円以上

【上限】200億円

議決権割合 取得後の議決権割合の過半数を有すること
  • 取得直前の議決権割合が過半数でないこと
  • 株式取得の日から3年以内に議決権の過半数を有することが見込まれること
他の制度との併用不可 同一のスタートアップ企業への投資に対して、段階取得の制度を利用していた場合には適用不可 取得の日が令和5年4月1日以後のものにつき、同一のスタートアップ企業への投資に対して、新規出資型の制度を利用していた場合には適用不可
所得控除割合 取得価額×25% 取得価額×20%
取崩し事由 ① 特定株式の取得から5年経過(成長投資・事業成長の要件を満たす場合を除く)
② 対象法人が議決権の過半数を有しないこととなった場合
③ 経済産業大臣の証明がされない場合
④ 配当を受けた場合
⑤ 対象法人を合併法人とする合併によりスタートアップ企業が解散した場合 等
① 特定株式の取得から3年経過(3年以内に議決権の過半数を有した場合を除く)
② 左記②~⑤と同様とされる見込み
その他要件 既存制度と同様とされる見込み

 

(4) 吸収合併があった場合の特別勘定の取崩しに係る税負担の軽減(M&A型)

改正前はM&A型の制度を利用した対象法人を合併法人とする合併によりスタートアップ企業が解散した場合には、特別勘定の残高を取り崩して一括で益金算入することとされていたが、改正後はスタートアップ企業の事業の成長発展が図られたことが明らかな場合には、合併の日を含む事業年度の翌事業年度開始の日から5年間で特別勘定の残高を均等に益金算入することが可能となった。

なお、この制度は改正により拡充された段階取得においても適用される。

 

 

(5) 新規出資型の適用要件の引き上げ

対象法人が大企業の場合の最低投資金額が2億円(改正前:1億円)に引き上げられる。

また、対象法人がスタートアップ企業に投資する場合において、すでに同企業に対して段階取得による制度が適用されているときは、新規取得型の制度対象から除外される。

(6) 適用期限の延長

上記までの措置を講じた上で、本制度の適用期限が2年延長(2028(令和10)年3月31日までの期間内に特定株式を取得して、その取得した事業年度終了の日まで引き続き有している場合において適用)。

 

2. 適用時期

大綱に記載なし

 

3. 実務上の留意点

  • 吸収合併をした場合に一括で益金算入する必要がなくなることで、対象法人の一括納税を免れ急激なキャッシュフロー悪化を防ぐことが期待される。
  • スタートアップ企業にマイノリティ出資をする段階から本税制を適用できる余地が生まれた。
  • 一方で適用要件の引上げによる本税制の適用範囲の縮小も予想される。

 

4. 今後の注目点

  • 大綱に記載されているその他所要の措置の内容
  • 段階取得型において株式の取得日から5年経過するまでに成長投資・事業成長の要件に該当しなかったときは取崩し要件に該当するのか
  • 吸収合併があった場合の特別勘定の取崩しに係る税負担の軽減の要件にスタートアップ企業の事業の成長発展が図られたことにつき明らかにされた場合とあるが、この手続きをどのように実施するのか

 

内容につきましては、「令和8年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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