認定株式分配に係る課税の特例の見直し

速報 2026年度(令和8年度)税制改正解説

1. 改正のポイント

(1) 趣旨・背景

事業環境が大きく変化する中で、我が国経済が中長期的な成長を実現するためには、企業が事業ポートフォリオの見直しを図ること等により、限られた経営資源を適切に配分していくことが重要である。

特に、スピンオフについては、現在のグループの中では成長戦略の実現が難しい事業を分離・独立させることで、その潜在力を発揮させる重要な切出し手法であり、海外では大規模案件を中心に事業切出しの手段の一つとして活用されているが、我が国では、活用実績が限られている(2023(令和5)年以降、スピンオフの検討を正式に公表した上場企業は5社である)。

2023(令和5)年度において、段階的に分離・独立し、元親会社との関係を残したいという意向を持つ企業がスピンオフを活用できるよう、スピンオフを行う企業に持分を一部残す場合(パーシャルスピンオフ)について、再編時に譲渡損益課税を繰延べ、株主のみなし配当に対する課税を対象外とするパーシャルスピンオフ税制が創設されており、2024(令和6)年度にはスタートアップ創出を促すための改正がなされた。

今年度改正では、スタートアップ創出だけでなくノンコア事業を切り出し、コア事業に専念するための事業ポートフォリオの組替えも促進すべく、パーシャルスピンオフ税制の適用要件の見直しが行われた。

(2) パーシャルスピンオフとは

事業再編としてのスピンオフとは、企業内における事業部門や企業グループを形成する複数の法人のうち一部の法人を、当該企業や企業グループから分離し、独立した法人として資本関係から外す行為をいう。

スピンオフは、単独新設分割型分割による「事業のスピンオフ」と、株式分配による「子法人のスピンオフ」(※)に分類され、「子法人のスピンオフ」のうち、親法人に子法人の発行済株式の一部を残して行うスピンオフを「パーシャルスピンオフ」という。

(※)「子法人のスピンオフ」には、既存の完全子法人を株式分配する場合に加えて、完全子法人に分社型分割等で事業を移転した後、当該完全子法人を 株式分配する場合を含む。

※ 上記については、株主の中に、A社を支配している株主がいないことを前提としている

(3) 内容(赤字・下線部分が改正箇所)

改正前は従業者継続要件が厳しく、また、完全子法人に対し主要な事業として新たな事業活動が求めら れていたが、従業者継続要件の緩和が図られ、主要な事業についても一定の見直しが行われる。

 

要件 改正前 改正後
株式のみ按分交付要件 その法人の株主の持株数に応じて完全子法人の株式のみを交付するものであること。 同左
交付資産に係る要件 その株式分配の直後にその法人が有する完全子法人の株式の数が発行済株式の総数の20%未満となること。 同左
非支配要件 現物分配法人が株式分配前に他の者による支配関係がなく、完全子法人が株式分配後に他の者による支配関係があることが見込まれていないこと。 同左
特定役員継続要件 完全子法人の特定役員の全てがその株式分配に伴って退任するものではないこと。 同左
従業者継続要件 完全子法人の従業者のおおむね90%以上がその業務に引き続き従事することが見込まれていること。 完全子法人の従業者のおおむね80%以上がその業務に引き続き従事することが見込まれていること。
親法人主要事業継続要件 株式分配前に行う事業のいずれかについて、経営資源を集中させるものとして特定しており、かつ、その特定した事業が株式分配後に引き続き行われることが見込まれていること。
子法人主要事業継続要件 完全子法人の株式分配前に行う主要な事業が完全子法人において引き続き行われることが見込まれていること。 完全子法人の株式分配前に行う主要な事業が上記で特定した事業以外のものであり、かつ、主要な事業がその完全子法人において引き続き行われることが見込まれていること。
その他の要件 下記の要件を満たしていること。
(1)産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けているこ と。
(2)経済産業大臣の定める以下の要件を満たしていること。
(ⅰ)完全子法人が主要な事業として新たな事業活動を行っていること。
(ⅱ)以下のいずれかの要件を満たすものであること。
① 完全子法人の特定役員に対して、ストックオプション(新株予約権)が付与され、又は付与される見込みである
② 完全子法人の主要な事業が、事業開始から10年以内である
③ 完全子法人の主要な事業が、成長発展が見込まれることについて金融商品取引業者が確認している
下記の要件を満たしていること。
(1)産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けているこ と。
(2)その法人及び完全子法人が実施する主要な事業について、その株式分配により生産性向上に関する目標の達成が見込まれること

(経済産業大臣の定める要件は、大綱に記載なし)

 

2. 適用時期

大綱に適用時期の記載はないが、2026(令和8)年4月1日以後に、産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けた法人が、同法の特定剰余金配当として行う現物分配で完全子法人の株式が移転するものについて適用されると考えられる。

 

3. 影響・対応策

子会社の段階的な分離・独立を検討したい企業にもスピンオフの活用が広がり、企業における事業ポートフォリオの見直し(ノンコア事業の切り出し)や大企業発のスタートアップ創出を加速することが期待される。

 

4. 今後の注目点

  • 適用要件の詳細(経済産業大臣の定める要件等)について大綱に明記されていないことから、今後確認が必要である。
  • 適用時期
  • 経済産業省の税制改正要望では、恒久化のための所要の措置を講じる旨の記載があったが、大綱には恒久化について明記されていなかったため、恒久化されるか今後確認が必要である。

 

内容につきましては、「令和8年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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