「物価高」及び「三党合意」を踏まえた、いわゆる「年収の壁」の引上げ
速報 2026年度(令和8年度)税制改正解説
1. 改正のポイント(所得税)
(1) 趣旨・背景
2025(令和7)年度改正法(所得税法等の一部を改正する法律)の附則81条等に基づき、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組み(恒久制度)が創設される。
併せて、2024(令和6)年12月11日の自由民主党・公明党・国民民主党の「三党合意」や「足元の厳しい物価高」を踏まえ、時限的に中低所得者(給与所得者の約8割が対象)に配慮した上乗せ措置が講じられる。
その結果、2026(令和8)年・2027(令和9)年における給与所得者の課税最低限は「178万円」まで引き上げられ、また、中所得者の基礎控除も低所得者並みに引き上げられる等、足元の物価高に配慮した措置が講じられる。
① 物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みの創設(恒久制度)
基礎控除が定額の場合、物価が上昇すると控除の実質的な価値が減少し、結果として実質的な税負担が増加する。こうした課題に対応するため、消費者物価指数(総合)に連動して基礎控除を引き上げる仕組みが創設され、併せて給与所得控除の最低保障額についても同様の措置が講じられる。 今般の改正により、「基礎控除」及び「給与所得控除の最低保障額」は、それぞれ4万円引き上げられる。
② 「三党合意」を踏まえた更なる対応(2年間の時限措置)
2024(令和6)年12月の「三党合意」を踏まえ、物価上昇の中で足元厳しい状況にある「中低所得者」に配慮し、時限的に以下の措置が講じられる。
- 給与所得者の「課税最低限」を178万円まで引き上げ(103万円※1から75万円増)※2
- 中所得者(年収665万円以下)についても「基礎控除」を104万円まで引き上げ(48万円※1から56万円増)
※1 「年収の壁」引上げ前の令和6年時点の数値
※2 2028(令和10)年分以降においても、生活保護基準額が178万円に達するまでは、課税最低限178万円は維持される予定
(2) 内容
① 物価上昇に連動して「基礎控除(本則)」及び「給与所得控除の最低保障額」が、それぞれ4万円引き上げられる。
② ①に加え、2026(令和8)年・2027(令和9)年の時限措置として、中低所得者(合計所得金額が489万円以下)を対象に「基礎控除の特例」が42万円まで引上げられ、また、給与所得控除額の最低保障額も5万円引上げられる。
その結果、今般の改正により、いわゆる「年収の壁」は、178万円まで引上げられる(2024(令和6)年まで103万円)。
<改正内容のまとめ>

今般の改正後の基礎控除額は、以下のとおり。

※1 基礎控除の特例による上乗せ額を加算した金額
※2 2028(令和10)年分以降は、2026(令和8)年・2027(令和9)年の消費者物価指数(総合)の上昇率を踏まえ、令和10年度税制改正により見直される予定
※3 2028(令和10)年分以降においても、生活保護基準額が178万円に達するまでは、課税最低限178万円は維持される予定
今般の改正後の給与所得控除額は、以下のとおり。

※1 2028(令和10)年分以降は、2026(令和8)年・2027(令和9)年の消費者物価指数(総合)の上昇率を踏まえ、令和10年度税制改正により見直される予定
※2 2028(令和10)年分以降においても、生活保護基準額が178万円に達するまでは、課税最低限178万円は維持される予定
〇 年収別|給与所得控除・基礎控除のイメージ【2024(令和6)年分】
(※)給与所得のみ、基礎控除以外の各種所得控除の適用はないものと仮定

〇 年収別|給与所得控除・基礎控除のイメージ【2025(令和7)年分】
(※)給与所得のみ、基礎控除以外の各種所得控除の適用はないものと仮定

〇 年収別|給与所得控除・基礎控除のイメージ【2026(令和8)年分・2027(令和9)年分】
(※)給与所得のみ、基礎控除以外の各種所得控除の適用はないものと仮定
収入が給与収入のみの場合における年収別減税額は次のとおりとなる。

※ 所得税(復興特別所得税を含む)及び住民税の減税額を集計
※ 単身世帯や共働き世帯を想定しており、基礎控除以外の所得控除はないものとして計算
③ 今般の改正に伴い、配偶者控除や扶養控除等の所得判定基準がそれぞれ4万円引上げられる。
- 配偶者控除の対象となる配偶者、及び扶養控除の対象となる扶養親族の合計所得金額要件が62万円以下(改正前:58万円以下)に引き上げられる。
(参考)給与収入のみの場合における配偶者控除、扶養控除の対象となる者の収入金額の目安
改正前:年収123万円以下 ⇒ 年収136万円以下(令和8・9年) - 障害者控除の対象となる配偶者、及び扶養親族の合計所得金額要件が62万円以下(改正前:58万円以下)に引き上げられる。
- 寡婦の対象となる扶養親族の合計所得金額要件が62万円以下(改正前:58万円以下)に引き上げられる。
- ひとり親控除の対象となる子の総所得金額等の合計額の要件が62万円以下(改正前:58万円以下)に引き上げられる。加えて、控除額を38万円(改正前:35万円)に引き上げる。
- 勤労学生控除の対象となる学生等の合計所得金額要件が89万円以下(改正前:85万円以下)に引き上げられる。
- 家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額が69万円(改正前:65万円)に引き上げられる。
<人的控除の所得要件等の一覧(令和8・9年)>

2. 適用時期(所得税)
- ひとり親控除の控除額における改正は、2027(令和9)年分以後の所得税について適用される。
- その他の改正は、2026(令和8)年分以後の所得税について適用される
3. 実務のポイント(所得税)
- 改正初年度の2026(令和8)年については、年末調整から適用される。
- 2027(令和9)年1月1日以後については、給与等の源泉徴収において適用される。
- 配偶者(特別)控除や扶養控除等の判定基準となる合計所得金額等もそれぞれ4万円引上がる。
- 今般の改正で上乗せされた「基礎控除の特例」については、2025(令和7年)度改正において時限措置とされた部分を含め、2026(令和8)年・2027(令和9)年までの時限措置となっている。
- 今後、基礎控除等は、定期的(2年ごと)に見直される(次回は、2026(令和8)年・2027(令和9)年の消費者物価指数(総合)を踏まえ、令和10年度税制改正で見直される予定)。
4. 今後の注目点(所得税)
- 改正法の施行時期(2025(令和7)年度改正は、2025(令和7)年12月1日)。
- 行政における給付や負担の決定に、所得税の合計所得金額等を参照してきた各種制度について、今後、基礎控除等が定期的に見直されていくことを踏まえ、どのような対応が行われるのか。
1. 改正のポイント(個人住民税)
(1) 概要(趣旨・背景)
所得税と同様に、個人住民税についても給与所得控除等の見直しが行われる。
なお、個人住民税については、基礎控除の改正は行われない。
(2) 内容
- 給与所得控除について、最低保障額が69万円(改正前:65万円)に引き上げられる。2027(令和9)年度及び2028(令和10)年度分にあたっては、上記最低保障額に5万円が加算される。
- 配偶者控除の対象となる配偶者、及び扶養控除の対象となる扶養親族の前年の合計所得金額要件が62万円以下(改正前:58万円以下)に引き上げられる。
- ひとり親控除の対象となる子の前年の総所得金額等の合計額の要件が62万円以下(改正前:58万円以下)に引き上げられる。加えて、控除額を33万円(改正前:30万円)に引き上げる。
- 勤労学生控除の対象となる学生等の前年の合計所得金額要件が89万円以下(改正前:85万円以下)に引き上げられる。
2. 適用時期(個人住民税)
- ひとり親控除の控除額における改正は、2028(令和10)年度分以後の個人住民税について適用される。
- その他の改正は、2027(令和9)年度分以後の個人住民税について適用される。
3. 今後の注目点(個人住民税)
所得税と同様に、所得・税額等を参照してきた各種制度について、今後、基礎控除等が定期的に見直されていくことを踏まえ、所管省庁において検討し、必要な対応が行われる。
内容につきましては、「令和8年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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