移転価格税務調査の国際的な活発化と日本企業への影響
近年、移転価格を巡る税務調査や課税は、各国において引き続き活発に行われており、日本企業にとっても重要な経営・税務リスクの一つとなっています。海外子会社との取引や、無形資産、役務提供、利益配分の在り方については、各国税務当局が強い関心を示しており、その動きは近年さらに顕著になっています。
2026年3月にスズキ自動車グループのマルチ・スズキ・インディアが、インドの税務当局から約578.6億ルピーに上る税務評価命令案を受領したことが公表されました。この事案は、インドにおいて大企業を対象とした大型の税務紛争が相次いでいる状況を象徴するものといえます。具体的な調整内容は明らかにされていませんが、金額規模や手続の性質から、移転価格に関連する論点が含まれている可能性が高いと考えられます。
日本国内移転価格調査の厳格化:アジア子会社取引の実態審査強化
一方、日本国内に目を向けますと、日本の国税当局による移転価格調査も引き続き厳格に行われています。特に、インド、中国や他のASEAN諸国にある子会社との取引については、利益率や取引条件の妥当性を巡り、日本側で移転価格調整が行われるケースが少なくありません。これらの調査では、契約書などの形式的な整理にとどまらず、実際の事業活動における機能やリスクの所在、さらには各国拠点の経済的実態が重視される傾向が一層強まっています。
このように、移転価格に関する調査や課税は一国に限定されるものではなく、複数国で同時並行的に問題となる可能性があります。その結果、企業は二重課税リスクに直面することも少なくありません。特に、インドや中国などの税務当局と日本の国税庁の双方から調整を受ける場合、企業の税務負担や実務対応は一層複雑になります。
日本企業への示唆:移転価格ポリシー整備と内部管理体制の構築
このため、日本企業においては、グループ内で移転価格ポリシーを明確に整理し、インド、中国を含むアジア各国の子会社との取引について、合理的かつ一貫した説明ができる体制を整えておくことが不可欠です。加えて、移転価格文書の整備や定期的な利益水準のモニタリングを通じて、将来の移転価格調査に耐え得る内部管理体制を構築することが求められます。移転価格リスクへの備えは、今後も日本企業にとって避けて通れない重要な課題であるといえるでしょう。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。