税のトピックス

2026年8月7日

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取引相場のない株式の評価に関する改正について(第3回有識者会議の情報をふまえて)

取引相場のない株式の評価に関する改正について(第3回有識者会議の情報をふまえて)

1. はじめに

既にニュースなどで取り上げられておりますが、取引相場のない株式の評価について、現行制度に内在する大きな歪みの是正を目的として、国税庁の有識者会議において見直しの検討が進められています。本改正は単なる算式の微調整ではなく、約60年維持されてきた評価体系を抜本的に再構築する可能性があり、相続・事業承継実務に与える影響が大きいと考えられています。

今回は本年6月に開催された第3回有識者会議までの情報を整理して、現時点でわかる改正の方向性について解説いたします。

2. 現行制度

現行制度における取引相場のない株式の評価方法は、原則として下図の通り、会社の規模に応じて、類似業種比準価額と純資産価額を折衷して評価を行います。

 

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3. 現行制度の問題点

最大の問題は、類似業種比準価額が純資産価額と比較して著しく低い水準にある点にあります。会計検査院の調査では、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の27.2%となっており、純資産価額の4分の1程度にとどまっています。さらに会社規模別にみると、大会社32%、中会社50%、小会社61%と、規模が大きいほど評価額が低くなる構造となっており、本来の公平性を損なう逆転現象が生じています。

この乖離の主因として、類似業種比準方式における配当要素の機能不全が指摘されています。実務上、無配企業が80%以上を占めるため、配当指標がゼロとなり、結果として評価額が機械的に引き下げられる仕組みとなっていることが問題として挙げられます。

また、会社規模区分に応じて評価方式の適用割合が異なる現行制度は、意図的な会社規模変更等を通じた評価圧縮を誘発しやすい構造となっており、国税当局は、行き過ぎた評価圧縮に対して評価通達6項(「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」)による課税処分を行ってきました。実際に平成27年~令和6年の株式評価に対する通達6項の適用件数は14件にのぼり、個別対応せざるを得ない状況が続いております。

しかし、通達6項による評価の増加については、納税者の予見可能性の低下を懸念する意見も示されており、評価方法そのものの明確化が要請されています。

4. 改正の方針

これらの問題を踏まえ、有識者会議では、評価の公平性確保や租税回避排除を柱とした見直し方針が提示されており、類似業種比準価額と純資産価額の乖離を是正するため、取引相場のない株式の評価方法の算定ロジックそのものの再設計が検討対象となっています。

なお、具体的な方向性としては、評価額の恣意性・操作性の排除、第三者への事業承継等の動向を踏まえた評価を行うため、配当・利益指標の再構成や、インカム・アプローチなど収益力をより適切に反映する指標の導入が議論されています。また、従来の会社規模に応じた評価方式の使い分けについても見直しが検討されており、より統一的な評価体系への移行が志向されています。

5. 実務への影響

本改正により、取引相場のない株式の評価方法の抜本的な見直しがなされる見込みであり、特に現行制度において類似業種比準価額の利用割合が高い大会社・中会社を中心に株式評価額が上昇する可能性があります。これにより、従来の評価圧縮を前提とした事業承継スキームや資本政策の有効性は低下する可能性が高く、また、会社規模変更や配当操作等による恣意的な評価調整の余地は縮小すると考えられ、承継時期や資本構成の見直しを含めた総合的な対応が求められることとなると予想されます。

(出典)国税庁 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回) 議事要旨・資料

 

執筆:兼髙 慶太  kanetakak@yamada-partners.jp

 

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