海外デスクレポート

2025年7月30日

グリーンカードを放棄した場合における税務上の注意点 (米国)

グリーンカードを放棄した場合における税務上の注意点 (米国)

1. 米国出国税の適用要件

グリーンカードを放棄した場合における注意点としては、米国の出国税が挙げられます。米国における出国税は、海外に居住することとなったことを契機とするものではなく、米国籍又はグリーンカードを放棄したことを契機とします。米国籍を保有している場合は、出生により米国籍を取得した場合で過去15年間のうち10年超の期間において米国に居住していない場合等を除き適用されます。グリーンカードを放棄した場合については、過去15年のうち8年間、永住権を有していた場合に限り適用されます。これらの適用対象者に該当した場合で一定の要件を満たした場合には出国税が適用されます。2024年時点における具体的要件は以下の通りです。以下のいずれかに該当する場合、米国の出国税が適用されます。

  • 過去5年間の平均所得税額が$201,000を超える場合
  • 放棄時における純資産が$2,000,000以上である場合
  • 過去5年間適切に納税義務を履行していなかった場合

平均所得税額及び純資産額が基準値以下であったとしても、過年度の納税義務が適切に履行されていない場合は、出国税の対象となります。過年度の申告義務を認識しておらず、適正に申告していなかった場合には、過年度の申告漏れに係る是正プログラムの利用をご検討ください。

 

2. 米国出国税の課税範囲について

米国の出国税は、放棄時点において保有する一定の繰延報酬を除く純資産の時価と簿価との差額のうち控除額を超える部分について放棄時に譲渡したものとして所得税が課されます。なお、2024年時点における控除額は$866,000です。

 

3. Form8854の提出について

米国の出国税の適用対象者に該当した場合には、年間平均課税所得及び純資産等の適用要件を満たさない場合であっても、Form8854をIRSへ提出しなければなりません。適用要件を満たした場合で課税所得が基礎控除額を下回る場合も同様です。特に合理的な理由もなく提出を怠った場合は、$10,000のペナルティが課せられます。米国市民権又はグリーンカードを放棄した場合には、適時適切にForm8854を提出することが重要です。 

4. 日米出国時課税の比較

日本の出国時課税制度としては、国外転出時課税制度が該当します。国外転出時課税制度では、所得税法上の居住者が非居住者となる場合、又は、居住者から非居住者に相続又は贈与により財産が移転した場合において、その時点における有価証券等が1億円以上である場合に適用されます。適用対象者に該当した場合は、国外転出時の有価証券等の時価と簿価との差額に対して、出国時、若しくは、相続又は贈与時に譲渡したものとして所得税が課税されます。日本の国外転出時課税制度と米国の出国税では、課税時期及び課税範囲等について多くの違いがあります。



 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
  • 山﨑 剛

    この記事の著者

    山﨑 剛
    税理士法人山田&パートナーズ
    税理士

    2019年、税理士法人山田&パートナーズに入所。国際部に配属。グローバル展開している上場企業、上場子会社といった法人の法人税申告業務、海外に資産を保有する個人の所得税及び相続税申告業務を中心に従事。2020年、大手金融機関に出向、法人オーナーを対象とした事業承継コンサルティングに従事。2024年、米国駐在。
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