1. 概要
米国CFC税制であるサブパートF所得課税(サブパートF)は、米国納税者が支配する外国法人による特定所得に対する米国課税の繰り延べに対処することを目的として1962年に制定されました。導入以前は、企業が低税率国に子会社を設立し、受動的所得や、容易に所在地を移転できる事業活動から生じる所得を子会社に留保することで、配当として本国に送金されるまで米国の課税を回避する手法が広く用いられていました。これは所得の人為的な移転を助長し、米国の税源浸食という問題を引き起こしていました。サブパートFは、このような課税繰延べを防止するための制度として機能します。また、2017年度の税制改正の際に、サブパートFを補完する制度として、過去にサブパートFの対象とならなかった一般事業所得を対象にしたグローバル低課税無形資産所得課税(GILTI)が施行されました。これらの制度のその基本的な仕組みは、特定の外国所得カテゴリーについて、外国法人の法人格を実質的に否認し、特定の外国法人の所得が実際に分配されるか否かにかかわらず、直ちに米国株主の課税対象と見なすことにあります。
2. 適用対象者及び課税金額
サブパートF及びGILTIは、支配外国法人(CFC)の米国株主に適用されます。CFCとは、その課税年度のいずれかの日において、米国株主が保有する議決権又は株式価値の合計が50%を超える外国法人をいいます。CFC判定の際には、米国人である直系家族(両親、祖父、祖母、孫を含む。ただし、兄弟姉妹は除く。)の株も自身の所有する株として数える必要があります。米国株主とは、CFCの議決権又は株式価値の10%以上を所有する米国人(米国市民、居住者、国内法人等)をいいます。この要件に該当した場合は、CFCの特定の所得に対する持分相当額を自身の課税所得に含める義務を負います。
3. 課税所得
サブパートF及びGILTIが対象とする所得は、CFCが獲得する所得のうち所得の移転が容易であると考えられる以下の所得等をいい、主に受動的所得、関連者所得及び無形資産所得で構成されます。サブパートF所得及びGILTI所得はその年度の累積利益の額までに限られます。
① サブパートF所得:
Foreign Personal Holding Company Income(FPHCI):
利子、配当、賃貸料、ロイヤルティ、賃貸収入、保険金及びこれらの所得を生み出す資産からのキャピタルゲイン等の受動的所得。
Foreign Base Company Sales Income(FBCSI):
CFCが、CFCの設立国以外の地域で生産、製造された資産を関連者から購入し第三者へ販売する、又は、関連者から購入した資産を第三者へ売却した場合で売却された資産がCFCの設立国以外の地域で使用、消費、処分される場合等に発生する所得。
Foreign Base Company Services Income(FBCSvcI):
CFCが、CFCの設立国以外の地域において、関連者のために、又は、その代わりにサービスを提供することで得られる所得。
② GILTI所得:
Global Intangible Low-Taxed Income(GILTI):
CFCの所得からサブパートF所得を除外した所得のうちCFC保有の有形固定資産の帳簿価額(各四半期末残高の平均値)の10%相当額を超過する部分(2026年以後に開始する事業年度から10%相当額の控除は廃止。)。なお、米国株主が法人の場合、GILTI所得の計算上、50%(2026年以後に開始する事業年度の場合、40%)を控除することができるため、実効税率は法人税率21%ではなく10.5%(2026年以後に開始する事業年度の場合、12.6%)となります。
なお、実際に配当を行う事でサブパートFやGILTIの適用を避けることはできません。しかし、これらのルールで課税された所得から配当が行われた場合には非課税になります。
4. 適用除外
サブパートFの適用要件を満たす場合でも、例外的に課税が免除される規定がいくつか存在します。主な適用除外規定は以下の通りです。CFCが関連者から受け取るFPHCI所得等についても除外されます。
De Minimis Rule:
CFCのサブパートF所得(FBCI)が、CFCの当該課税年度の総所得の5%、又は、100万ドルのいずれか小さい方の金額未満である場合、そのサブパートF所得はゼロとみなされ、課税対象となりません。
High-Tax Exception:
外国所得税の実効税率が米国法人税率の90%(現行21%の米国法人税率を前提とすると18.9%)を超える場合、CFCのサブパートF所得及びGILTI所得を除外することができます。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。