海外赴任等により日本から米国に移住を開始した初年度については、米国所得税法上、居住者又は非居住者のいずれに該当するのか判定が必要となります。同一暦年において、居住者及び非居住者の両方(Dual-Status Individuals)に該当する場合もあります。また、納税者の選択により居住者又は非居住者の選択をすることが可能な場合もあります。居住者に該当した場合は全世界所得に対して課税され、非居住者に該当した場合は国内源泉所得に対して課税されます。この判定により課税範囲が決定されるため慎重に検討する必要があります。
1. 実質滞在テストの条件を満たす場合
米国移住初年度において、実質滞在テストの要件を満たし米国所得税法上の居住者に該当する場合は、米国入国日から居住者として扱われ、米国入国日以後は全世界所得に対して課税されます。米国入国日より前の期間は、非居住者に該当し、国内源泉所得に対して課税されます。
例えば、海外赴任により4月1日に日本から米国に入国し、その後、翌年まで引き続き米国に滞在した場合、4月1日以後は居住者として扱われ、日本源泉所得を含む全世界所得が課税対象となります。1月1日から3月31日までの期間は、米国源泉所得のみが課税対象となります。
課税年度の途中から居住者となった場合は、定額控除(Standard Deduction)の適用を受けることができず、項目別控除(Itemized Deductions)しか適用を受けることができません。なお、実質滞在テストを満たした場合でも、学生ビザ等の一定の種類のビザについては、例外的に非居住者を選択できる場合があります。また、租税条約の適用により非居住者としての扱いをうけることが可能な場合もあります。
※ 実質滞在テスト(Substantial Presence Test)
次の要件をいずれも満たす場合には、米国所得税法上、居住者に該当します。
① その年の米国の滞在日数が31日以上
② その年の米国の滞在日数、前年の米国の滞在日数の3分の1の日数、前々年の米国の滞在日数の6分の1の日数の3年間の合計滞在日数が183日以上
2. 実質滞在テストの条件を満たさない場合
実質滞在テストの要件を満たさず米国所得税法上の居住者に該当しない場合は、その課税年度については、非居住者として米国源泉所得のみが課税対象となります。
例えば、海外赴任より10月1日に日本から米国に入国し、その後、翌年まで引き続き米国に滞在した場合、10月1日から12月31日までの期間も含めて非居住者に該当し、暦年を通じて米国源泉所得のみが課税対象となります。
3. 居住者ステータスの初年度選択
実質滞在テストに基づき、米国所得税法上の居住者に該当しない場合であっても、以下の要件を満たす場合は、米国入国日以後の期間については、居住者を選択(First-Year Choice)することが可能です。
① 課税年度において31日以上引き続き米国に滞在していること
② ①の期間の初日から年末までの期間のうち、75%以上の期間、米国に滞在していること
③ 対象年度の翌年において、実質滞在テストの要件を満たすこと
例えば、海外赴任より10月1日に日本から米国に入国し、その後、翌年まで引き続き米国に滞在した場合において、居住者ステータスの初年度選択により居住者の選択をした場合には、10月1日から12月31日までの期間は、居住者として全世界所得に対して課税されます。
4. 居住者ステータスによる暦年課税選択
年末時点において結婚しており、かつ、夫婦の双方又は一方が居住者である場合には、夫婦合算申告書(Joint Income Tax Return)を提出することを条件に、暦年を通じて居住者(Full-Year Resident)として申告することが可能です。この場合における居住者には、米国移住初年度において実質滞在テストの要件を満たし居住者に該当した場合だけでなく、実質滞在テストの要件を満たさない場合に居住者ステータスの初年度選択を選択した場合も含まれます。
この選択をした場合には、定額控除(Standard Deduction)の適用を受けることができます。一方で、米国移住前の日本の所得についても米国の課税対象に含めて申告する必要があります。なお、日本で課された所得税額のうち一定の金額については、外国税額控除の適用を受けることが可能です。
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