海外デスクレポート

2026年9月9日

インド事前確認制度(APA)年次報告書(FY2025-26)から見る最新動向 (米国)

インド事前確認制度(APA)年次報告書(FY2025-26)から見る最新動向 (米国)

インドの中央直接税委員会(CBDT)は2026年7月、2025-26年度の事前確認制度(APA)に関する年次報告書を公表しました。今回の報告書では、APAの申請・締結件数や二国間APAの相手国別状況、合意までの期間、採用された移転価格算定方法などが公表されています。

1. APAとは

APAは、将来の関連者間取引に適用する移転価格算定方法について、事前に税務当局と合意する制度です。インドでは2012年に制度が導入されて以降、多くの企業に利用されており、最長5年間の適用期間に加え、最大4年間のロールバックも認められているため、最長9年間にわたり税務上の確実性を確保できます。

APAには以下の種類があります。

  • 単独APA(UAPA)

  • 二国間APA(BAPA)

  • 多国間APA

近年のインドでは、二重課税リスクの解消を目的として、二国間APAの利用が増加しています。

2. 2025-26年度統計データのハイライト

  • APAの申請・締結状況
    2025-26年度のAPA申請件数は215件となり、そのうち単独APAが112件、二国間APAが103件でした。一方、締結件数は過去最多となる220件を記録し、単独APAが136件、二国間APAが84件でした。制度開始以来の累計では2,277件の申請に対して1,035件が締結されており、2026年3月末時点の未処理案件は841件となっています。

  • APA締結までの期間
    合意までに要した期間の中央値は、単独APAで36か月、二国間APAで38か月でした。
    依然として長期間を要する制度ではあるものの、近年は処理の効率化が進められており、処理期間は改善傾向にあります。

  • 二国間APAの主な相手国

    2025-26年度に締結された二国間APAの相手国は、米国が39件と最も多く、次いでフィンランド(9件)、シンガポール(8件)、英国(7件)、日本(6件)となりました。

  • 二国間APAの申請件数

    新規申請では米国が46件で最多となり、英国(13件)、日本(12件)、シンガポール(6件)、デンマーク(4件)が続いています。
    日本は締結件数、申請件数ともに上位に位置しており、日系企業によるインドAPA制度の活用が定着していることが分かります。

  • 採用された移転価格算定方法
    採用された算定方法では、単独APA、二国間APAともに取引単位営業利益法(TNMM)が中心となっています。

  • UAPA:TNMM 57%
  • BAPA:TNMM 69%
    特にITサービスや業務支援サービスなど、インドで多く見られる限定的機能・限定的リスクの事業モデルでは、引き続きTNMMが主流となっています。

3. APAの重要性の高まり

インドのAPA制度は2012年の導入以降着実に利用が拡大し、現在では世界有数の規模を持つAPAプログラムへと成長しています。2025-26年度には過去最多となる220件のAPAが締結されており、インド税務当局も制度の積極的な活用を推進しています。インドでは累計ベースで単独APAが大半を占めています。これは、ITサービスや研究開発支援、業務支援サービスなど比較的シンプルな取引を行う企業が多く、インド側の移転価格リスクへの対応を主な目的とするケースが多いためです。一方で、近年は日本を含む主要国との二国間APAも増加しており、二重課税リスクの解消や税務上の確実性の確保を目的として活用が広がっています。日系企業にとってインドは、製造拠点としてだけでなく、IT、医薬品、自動車関連産業など幅広い分野で重要性が高まっています。今回の統計では、日本は二国間APAの申請件数で英国に次ぐ3位となっており、多くの日系企業がインドにおける移転価格リスクの管理手段としてAPAを活用していることがうかがえます。近年はサプライチェーンの再編や為替変動などにより事業環境の不確実性が高まる中、インド税務当局による移転価格執行も引き続き活発に行われています。このような環境下では、事前に税務当局と移転価格について合意し、将来の税務リスクや二重課税リスクを軽減できるAPAの重要性は今後さらに高まるものと考えられます。特にインドで継続的に事業を展開する日系企業にとって、APAは有効な税務リスク管理手法の一つといえるでしょう。

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
  • 高野 祐

    この記事の著者

    高野 祐
    税理士法人山田&パートナーズ
    シニアマネージャー 海外事業部 インド駐在員 / 公認会計士

    2010年山田&パートナーズ入所。日本国内にて10年以上の実務経験を経て、20224月~20233月までインドに駐在し、日系企業に対してコンサルティング業務を含む税務・会計に関する幅広いサービスを提供。20244月より、再度インドに駐在。
  • 門田 英紀

    この記事の著者

    門田 英紀
    税理士法人山田&パートナーズ
    パートナー 公認会計士 税理士

    日本公認会計士協会 租税調査会専門委員。2004年入所。法人のお客様向けに、会計・税務顧問、企業組織再編、 M&A コンサルティング等、幅広く担当。
  • 倉本 正丈

    この記事の著者

    倉本 正丈
    Yamada & Partners USA, Inc.
    シニアディレクター

    2025年よりYamada & Partners 移転価格チームに参画。大手会計事務所の移転価格パートナーとして、移転価格戦略の構築、文書化、プランニング、相互協議の合意および解決支援、事前確認制度に精通し、日本および米国の様々な案件において、28年にわたり多くの多国籍企業を支援してきた経験を有する。
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