国税庁は、「令和7年度租税滞納状況の概要」を公表しました。
租税滞納とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発せられたものをいいます。今回の資料からは、国税の滞納状況全体は長期的に改善している一方、滞納残高については増加傾向にあることが分かります。
1. 新たに発生した滞納額は、ほぼ横ばい
令和7年度に新たに発生した租税滞納額は、9,935億円でした。前年度の9,925億円から0.1%増加し、ほぼ横ばいとなっています。
新規発生滞納額は、バブル経済期の平成4年度に約2兆円を記録しました。その後は減少傾向にあり、令和7年度はピーク時の約半分の水準です。
また、徴収決定済額に対する新規発生滞納額の割合は1.1%でした。平成16年度以降、22年連続で2%を下回っており、国税全体で見ると、滞納の発生割合は低い水準で推移しています。
2. 滞納残高は7年連続で増加
令和7年度の滞納整理済額は9,802億円で、前年度から3.3%増加しました。
しかし、新たに発生した滞納額が滞納整理済額を133億円上回ったため、年度末の滞納残高は9,847億円となりました。前年度の9,713億円から1.4%増加し、6年連続の増加となっています。
もっとも、滞納残高は、ピークであった平成10年度の2兆8,149億円と比べると約35%の水準です。長期的には、滞納残高は大幅に減少しています。
なお、「滞納整理済額」とは、滞納となっていた国税について、納付、充当、徴収の猶予、滞納処分の停止などにより、整理された額をいいます。
3. 滞納残高が多い税目
令和7年度末の滞納残高を税目別に見ると、次のとおりです。
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所得税:3,948億円
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消費税:3,893億円
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法人税:1,380億円
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相続税:506億円
所得税と消費税を合わせると7,841億円となり、滞納残高全体の約8割を占めています。
所得税は個人事業主や給与所得者などに関係し、消費税は事業者が申告・納付する機会の多い税目です。そのため、滞納残高の中でも大きな割合を占めているものと考えられます。
ただし、税目ごとの滞納額は、納税者数や申告税額などにも左右されるため、単純に「滞納が発生しやすい税目」と判断する際には注意が必要です。
4. 国税庁による滞納整理の取組
国税庁は、滞納の未然防止や、滞納が発生した場合の早期かつ確実な徴収に取り組んでいます。
その一環として、滞納者への接触方法を検討する際に、過去の接触状況、申告書のデータ、業種などの情報を活用しています。電話、臨場、文書など、どの方法で接触する可能性が高いか、また電話がつながりやすい曜日や時間帯について、データ分析を行っているとされています。

出典:国税庁「令和7年度租税滞納状況の概要」
令和7年度に申告などによって納付すべき税額が確定した国税のうち、年度末までに徴収された割合は99.8%でした。この数値からも、新たに発生した滞納の多くが、比較的短期間に解消されていることが分かります。
一方、通常の滞納整理によって解決することが困難な事案については、国税庁が訴訟などの法的手段を活用する場合があります。
5. 詐害行為取消訴訟とは
国税の徴収を免れる目的で、納税者が財産を隠したり、特定の債権者にだけ返済したりすると、国税の徴収が困難になることがあります。
このような場合、一定の要件を満たすと、国は「詐害行為取消訴訟」を提起し、納税者が行った財産処分の取消しなどを裁判所に求めることがあります。
国税庁の資料では、資金繰りが悪化した滞納法人が、国税を納付しないまま代表者個人への返済を優先した事例が紹介されています。このような行為について、国税の徴収を害するものとして、訴訟が提起されました。

出典:国税庁「令和7年度租税滞納状況の概要」
令和7年度に国税庁が提起した訴訟の件数は172件でした。
まとめ
令和7年度の国税滞納状況を見ると、新たに発生した滞納額はほぼ横ばいでした。一方、滞納整理済額を上回る滞納が新たに発生したため、滞納残高は9,847億円となり、7年連続で増加しています。
国税の滞納は、納期限を過ぎると延滞税が発生するほか、督促や財産の差押えなどにつながる可能性があります。納付が難しい場合には、放置せず、早めに所轄の税務署へ相談することが重要です。
一定の要件を満たす場合には、納税の猶予が認められることもあります。資金繰りなどの事情により納付が困難な場合は、早期に税理士などの専門家へ相談することも有効です。