1. はじめに
医療法では医療機関の開設者は営利を目的としてはならないこととされており、原則として営利を目的としない法人または医師(歯科医師)個人が開設者となります。
法人開設者は通常「医療法人」ですが、近年は「一般社団法人」による開設が増加しています。医療法人は設立に都道府県等の認可が必要であり、事業や経営の実態を定期的に報告する仕組みをもって非営利性の確保に努めていますが、一般社団法人は登記のみで設立が可能であり、上記のような報告制度もありません。
非営利性の確保の観点から、2026年4月1日以後に開始する事業年度において、医療機関を開設する一般社団法人に対して、事業報告書等の提出が義務付けられます。
そこで今回は、医療機関を開設する一般社団法人の報告制度について解説します。
2. 一般社団法人立医療機関の現状と課題
① 開設数
医療機関の総数は2014年以降2023年時点において概ね横ばい(177,546施設→179,834施設)ですが、一般社団法人が開設者となっている医療機関数は2014年の349施設から2023年の783施設と2倍以上になりました。

② 一般社団法人立医療機関の課題
厚生労働省の社会保障審議会医療部会において次の意見が課題として述べられており、その結果として今回の報告制度創設につながりました。一般社団法人自体は非営利法人に該当しますが、その一般社団法人を営利法人が運営している事例が確認されていることが問題点となっています。
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医療法では、医療機関の開設者は営利を目的としてはならないこととされているところ、昨今、一般社団法人による医療機関の開設事例が増加しており、非営利性の観点で疑義が生じている。
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一般社団法人立の医療機関の非営利性について、医療法人と同程度の確認が可能となるよう、開設時などにおいて新たに各種事項の届出を求めるべきである。あわせて、自治体に対して、非営利性の確認のポイントを示すべきである。
出所:2024年12月25日付け社会保障審議会医療部会「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見」
3. 報告内容と医療法人制度との比較
医療機関を開設する一般社団法人が提出しなければならない書類は、①貸借対照表、②損益計算書、③事業報告、④附属明細書(①~③に係るもの)とされており、医療法人が都道府県等に届け出る書類との比較は下表の通りです。
なお、損益計算書は医業収益と医業費用が区分経理が求められることになっており、附属明細書は厚生労働省令で定めるものに限るとされていますので今後確認が必要です。(2026年4月8日時点では当該省令は公表されていません)
届出が義務付けられる書類
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書類
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医療法人
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一般社団法人
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事業報告書
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○
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○
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財産目録
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○
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貸借対照表
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○
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○
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損益計算書
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○
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○
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関係事業者との取引状況報告書
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○
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-
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監事の監査報告書
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○
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-
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附属明細書
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△(一定の場合)
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△(一定の場合)
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公認会計士等の監査報告書
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△(一定の場合)
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-
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純資産変動計算書
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△(一定の場合)
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-
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出所:2026年1月28日付け厚生労働省医政局「一般社団法人が開設する医療機関の非営利性の徹底について」
4. おわりに
医療機関は非営利性を求められることからその運営について透明性の確保が必要です。そのために今回一般社団法人に対する報告制度が創設されましたが、上記の表の通り、その報告内容には差があります。今後、具体的な届出書類、届出様式、その他の書類を用いて都道府県等が確認すべき事項や立入検査を行う際の留意点については、通知される予定のため、これらの動向に注意が必要です。
執筆:竹原 将人 takeharam@yamada-partners.jp