海外デスクレポート

2023年12月14日

ハーグ条約加盟、認証手続きの簡素化 (中国)

ハーグ条約加盟、認証手続きの簡素化 (中国)

2023年38日、中国は「外国公文書の認証要件の撤廃に関する条約」(以下「ハーグ条約」という)に加入しました。2023117日以降、中国と日本の間で発効されます。中国の香港特別行政区及びマカオ特別行政区は、既にハーグ条約に加盟しており、今回、中国本土にもハーグ条約が適用されることとなりました。

ハーグ条約の発効によって、117日以降、日本が発行する条約範囲内公文書は、アポスティーユ (Apostille)を取得するだけで中国本土にて使用することができます。なお、ハーグ条約への加盟に伴い、117日より中国大使館における領事認証業務は停止となっており、今後は領事認証を取得することができなくなりました。中国国内における対応整備が追い付いていない状況でもあることから、アポスティーユ認証の書類で受理されるかどうかについて、提出先へ事前確認を実施するのが好ましいと考えられます。

 

日本国内で発行された公文書を海外で利用する場合における認証取得方法は以下の通りです。

(1) 外国公文書の認証を不要とする条約であるハーグ条約に参加している国や地域の発行している公的書類であれば、当該国の指定機関に公的書類を持参して発行した機関のサインと印鑑が真正であることを証明するアポスティーユを取得します。
(2) ハーグ条約に加入していない国や地域の発行している公的書類の場合には、次の2つの段階を踏む必要があります。
① 当該国または地域の指定機関(または外務省)に公的書類を持参し、当該公的書類を発行した機関のサインまたは印鑑が真正であることの証明を受ける。
② ①の証明書を、さらにその国または地域にある大使館または領事館に提出して第二認証を受ける。

これまで中国国内で利用する日本国内発行文書は(2)の手法で認証を得る必要があり、認証完了まで少なくとも2~3週間、ビザ申請センター予約状況によっては2~3ヶ月の時間を要していました。今回のハーグ条約加入に伴い、領事認証が不要となったため時間・コストの大幅な節約につながります。

公文書の認証手続きは(1)外務省のアポスティーユ取得のみで完了することができ、遺産相続における遺産分割協議書やパスポートコピーについては私文書に該当するため、外務省手続きの前に公証人役場・法務局認証をうけたうえでアポスティーユ取得が必要となります(公証役場の地域によっては、公証役場でアポスティーユまで取得することが可能)。

 

なお、海外で発行された資料を中国で利用する場合、当局手続きにおいては管轄当局窓口で、銀行手続きにおいては支店窓口で、具体的にどのような資料の認証が必要となるのか、事前照会をしてから認証されることをお勧めいたします。公文書であっても、翻訳文書を付けて認証が必要となる場合には、私文書として扱われますので注意が必要です。

 

※ 参考 
http://jp.china-embassy.gov.cn/chn/tztgnew/202310/t20231024_11167059.htm
https://www.visaforchina.cn/TYO2_JP/generalinformation/news/283457.shtml

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
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  • 大井 高志

    この記事の著者

    大井 高志
    税理士法人山田&パートナーズ パートナー
    亜瑪達商務諮詢(上海)有限公司 総経理
    税理士 公認不正検査士

    2013年山田&パートナーズ入所。大手金融機関への出向後、2016年より上海へ赴任。中国系会計事務所への出向を経て2019年より現職。中国・香港・台湾における組織再編、進出・撤退支援、M&A関連業務、移転価格税制コンサルティング、コーポレートガバナンス、不正調査対応等のコンサルティング業務に従事。

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