海外デスクレポート

2025年10月9日

海南自由貿易港「封関」ー 開放拡大と優遇措置 (中国)

海南自由貿易港「封関」ー 開放拡大と優遇措置 (中国)

2025年723日、国務院新聞弁公室は記者会見を開き、海南自由貿易港が20251218日に正式に封関されることを発表しました。「封関」とは、海南島全域を一つの税関監督特殊区域とし、中国国外と海南島との間に「一線税関」、海南島と中国本土との間に「二線税関」を設け、これらの地域における以下の政策により、海南島を通じた国際的な門戸開放政策を推進します。

一線税関では、貨物の輸入に関する一連の開放・利便化措置である「一線放開」が実施されます。

二線税関では、「一線放開」による措置を享受した貨物が、本土移出入時に関税等を適用する「二線管住」が実施されます(一部加工品は免税対象)。

また海南島内での貨物・資金流通は原則自由(免税品購入を含む)とする「島内自由」が実施されます。

 

主な優遇措置(海南vsその他地域)

項目 海南自由港 その他地域
輸入関税の免税措置 ・ 海南島に設立した企業・事業単位等の輸入品は輸入関税・増値税・消費税を免除(ネガティブリストを除く)
・ 当政策前と比較すると、対象品目数は1,900品目から約6,600品目に拡大。輸入品全体に占める割合は21%から74%に増加。
平均関税率7.5
加工後の
国内販売
輸入原材料を用い、加工増値率が30%以上の製品は、中国本土への移出時に関税免除(増値税・消費税は課税) 引取時に納税
保税手冊消込
企業所得税 2025年時点では奨励産業企業を対象に税率15%(実質的運営要件必須)
2035年までに税率15%を全企業に適用拡大予定(ネガティブリストを除く)
標準税率25
個人所得税 以下の要件を満たす個人の実効税率上限15
- 海南で年間183日以上居住
- 当局認定の高度人材または年収30万元以上
累進課税
(最高税率45%)
外貨管理 EF口座(多機能自由貿易口座)による送金手続きの簡素化・迅速化
オフショア為替レート適用、為替差益の最大化
複数通貨を1つの口座で管理を実現
QFLP基金の設立や外貨登記の手続きを簡素化
海外からの資本が海南で株式投資しやすくする
年間5万元米ドル制限

 

また、2025730日に海南省人民代表大会は《海南自由貿易港外商投資条例》を公布し、以下の外資優遇策を発表しています。

  • 外商投資企業が海南自由港内で再投資する場合の外貨登記免除
  • 出資、利益、知的財産権使用料、補償金、清算所得などは人民元・外貨いずれも制限なく送金可能​​
  • 外資企業の外国人従業員の給与や正当な収入は自由に送金でき、給与換金の利便化も段階的に導入予定

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
  • 大井 高志

    この記事の著者

    大井 高志
    税理士法人山田&パートナーズ  海外事業部 パートナー
    亜瑪達商務諮詢(上海)有限公司 総経理
    税理士・公認不正検査士

    2013年山田&パートナーズ入所。大手金融機関への出向後、2016年より上海へ赴任。中国系会計事務所への出向を経て2019年より現職。中国・香港・台湾における組織再編、進出・撤退支援、M&A関連業務、コーポレートガバナンス、不正調査対応、内部統制支援等のコンサルティング業務に従事。

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