国税庁は、「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を公表しました。これによると、今年6月までの1年間に実施された所得税の調査等件数は73万6,336件(対前年比+21.7%)。申告漏れ所得金額の総額は9,317億円(同△6.5%)と減少した一方で、追徴税額は1,431億円(同+2.4%)と過去最高を記録しました。AIによる調査対象の選定など、効率的かつ的確な調査が奏功したとみられます。
1件当たりの申告漏れ所得が多い業種
実地調査1件当たりの申告漏れ所得金額は1,240万円(同+6.9%)。特に高額だった業種は次のとおりです。
- キャバクラ 4,164万円
- 眼科医 3,894万円
- ホステス、ホスト 2,968万円
- 経営コンサルタント 2,734万円
- 太陽光発電 2,142万円
インターネット取引を行う個人への調査
インターネットを通じてシェアリングエコノミーなど新分野の取引を行う個人に対する調査は1,155件。1件当たりの申告漏れ所得金額は1,595万円(同+11.4%)、1件当たりの追徴税額は305万円(同△4.4%)となりました。
調査件数を取引区分別に見ると、ネット通販等592件 、デジタルコンテンツ156件、シェアリングビジネス109件、ネット広告76件、その他222件となっており、新しいビジネスモデルに関する調査を強化している様子がうかがえます。
出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
海外投資等を行っている個人に対する調査
国際化に対応するため、海外投資や海外資産を保有する個人への調査も重点化されています。
- 申告漏れ所得金額の総額は922億円(同+38.9%)
- 1件当たりの申告漏れ所得金額は3,459万円(同+34.7%)
- 1件当たりの追徴税額は866万円(同+33.4%、実地調査全体の2.9倍)
【事例】国外送金等調書とCRS情報を活用し国外不動産収入等を把握
A国で賃貸中の不動産収入や、B国金融機関口座で受け取った投資信託収益・利子を申告していなかったケースが発覚し、課税処分が行われました。

出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
国税庁では、今後も国外送金等調書などのさまざまな情報を活用し、海外取引・海外資産関連収入の的確な把握及び積極的な調査に取り組むとしています。