増値税法の施行以来、海外に対してサービス料や無形資産使用料等を支払う場合、源泉徴収による増値税の納付義務が生じるか否かの判断基準は大きく変化しています。
従来は、「購入者または提供者のいずれかが中国国内に所在しているか」という形式的な基準が重視されていましたが、現在は、当該サービスや無形資産が中国国内で『消費』されているかどうかという、より実質的な基準が採用されています。
ここでいう「国内消費」とは、『中華人民共和国増値税法実施条例』第4条に基づき、以下のいずれかに該当する場合を指します。これらに該当する場合、原則として中国において増値税が課税されます。
(一)海外事業者または個人が中国国内の事業者または個人に対してサービスや無形資産を提供する場合(ただし国外で現地消費されるサービスを除く)
(二)海外事業者または個人が販売するサービスや無形資産が、中国国内にある貨物、不動産、または自然資源に直接関連する場合
(三)国務院の財政・税務主管部門が定めるその他の場合
【 参考:ケース別 増値税源泉徴収の要否判断 】
| ケース |
納付要否 |
主な理由 |
| 国内会社が利用する中国国外のクラウドサービスの利用料(サーバーは国外、データは国内で使用) |
必要 |
サービスの実際の利用と消費地が国内であるため |
| グループ内での海外運営サポート報酬・コンサルティング報酬 |
原則必要 |
サービスの受益主体が国内会社であり、「海外での現地消費」を立証することが困難なため |
| クロスボーダーのオンライン研修の費用 |
必要 |
受益者が中国国内にいる場合は国内消費と判断されるため(IPアドレスや支払記録で追跡可能) |
| 国内案件に関係する海外弁護士費用・監査費用 |
必要 |
「国内の貨物、不動産に直接関連する」に該当する可能性が高いため |
| 商標使用料 |
必要 |
無形資産(商標)の最終的な使用地や価値実現地が国内であるため |
| 中国国外の会社への実験の委託料(成果物も中国国外で使用) |
不要の可能性 |
サービス全体が海外で発生・消費されると立証できれば、国内の課税対象外となり得るため |
中国においては中国国外への送金時における増値税の源泉徴収の要否の判断は、企業自身の判断に大きく依存するため、コンプライアンス上のリスクを軽視することはできません。
企業がある海外サービスについて「源泉徴収不要」と判断した場合、税務調査があったときは企業側がその判断を裏付ける十分な立証責任を負うことになります。
そのため、以下の点に留意し、証拠書類を体系的に整備・保存しておくことが極めて重要です。
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契約書
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業務指示や連絡記録
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作業成果物
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検収・受領に関する証明資料
これらを通じて、当該サービスの提供場所、業務プロセス、成果物の検収および使用がすべて中国国外で完結しており、中国国内の経営活動とは無関係であることを、客観的かつ明確に説明できる状態を整えておく必要があります。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。