1.「超齢労働者基本権益保障暫行規定」の出台
「超齢労働者基本権益保障暫行規定」)は、2026年5月に中国政府より公布され、2026年7月1日より施行されます。超齢労働者とは法定退職年齢を超えて就労する労働者をいい、本規定は、中国において初めてこれらの労働者の権益保護を体系的に定めた制度です。
中国では、法定退職年齢が定められており、それぞれ男性は60歳、女性は50歳(女性幹部は55歳)となっています(2026年6月現在)。中国国内の少子高齢化や年金財政の圧迫を背景に法定退職年齢の引き上げについても議論が加速しています。
2. 本規定の適用対象
本規定が適用されるのは、中国国内の企業が、法定退職年齢を超える人を雇用し、その人が企業の管理下で、企業から指示された業務を行い報酬を得ている場合です。
本規定では適法に早期退職した人が退職後再雇用されるケースも対象に含まれると明記されています。一方で、法令に基づく「弾性延遅退休」(法定退職年齢の引き上げに対応するための柔軟な退職時期の延長)の期間にある人は、原則として本規定の対象外と整理されており、これらの労働者は労働契約法など通常の枠組みが適用されます。
3. 本規定のポイント
本規定の重要なポイントは以下の通りです。
① 書面による労働条件の合意の義務化
- 超齢労働者を採用する際、労働条件を明確にした書面による合意が必要です
- 合意書には、期間、職務内容、勤務地、労働時間、休息休暇、報酬、社会保険、労働保護、労働条件、職業危害防護などを明確に記載が必要です
② 賃金・労働時間に関する最低基準の明確化
③ 安全配慮・適職配置の義務
- 超齢労働者の身体的な状況に応じた業務配置を行い、危険作業は禁止されています
- 安全教育や職業衛生管理の実施も義務化されています
④ 工傷保険(労災保険)の制度化(最大の制度変化)
超齢労働者も工傷保険に加入させなければならず、事故発生時には制度的に補償されます
⑤ 紛争解決ルートの明確化
- 超齢労働者と企業の間に、報酬・休息休暇・安全衛生・工傷保障などに関する紛争が生じた場合は、労働紛争として労働仲裁を申請します。それ以外の事項については、直接人民法院に提訴できます
- 企業は残業関連、最低賃金、賃金の支払形態・遅延禁止等に違反した場合、超齢労働者は人社当局に申立ができ、人社当局は労働保障監察条例や労働契約法に基づき監督・処理を行うことができます
4. 今後企業が取るべき対応
本規定の施行を受けて、企業では以下のような対応が必要になります。
① 超齢労働者の洗い出し、および雇用形態・業務内容・管理実態の把握
② 書面合意の整備
③ 工傷保険の整備
④ 本規定に基づく労働時間・賃金管理の見直し
⑤ 安全管理体制の強化
⑥ 契約・勤怠・賃金・教育・保険の管理の見直し
5. まとめ
本規定のキーポイントは、契約名称が何であれ、実態として会社の労務管理下で報酬を得て働いているならば、最低限の保障と義務が発生するという考え方を制度として明確にした点です。つまり、従来のように「定年を超えた=一律に民事の『労務(業務委託)』」とする運用は今後、通用しにくくなります。超齢就労を「制度の外」に置く時代から、実態に即して最低限の権利と企業義務を明確にする時代への移行を示すものです。
出典:超龄劳动者基本权益保障暂行规定_中华人民共和国人力资源和社会保障部
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