2023年12月27日にインドネシア政府は、個人所得税の規定を改正し、税率の表示を配偶者と扶養家族の有無に基づいた実効税率(Tarif Efektif Rata-Rata:通称TER)に変更しました。2024年1月から適用となりました。ここでは、インドネシア個人所得税の概要とその改正点について整理します。
(1) インドネシア個人所得税
納税義務者は、以下の居住者と非居住者に分類され、課税対象が異なります。
・居住者
下記のいずれかで、課税対象は全世界所得(インドネシア国内所得+国外源泉所得)となります。
① インドネシアに住所を有する方
② 12か月以内に183日を超えて滞在している方
③ インドネシアに滞在し居住する意思を有している方のいずれかに該当する方
なお、外国人でインドネシア国外給与支給を受ける場合の取り扱いについては、留意が必要です。2002年4月には、外国人向けに全世界所得を合算したグロスベースの月間給与のガイドラインが国別・職業別で設定され、原則として全世界所得を納税申告することとなっています。
・非居住者
インドネシアの居住者以外の個人を指し、この場合、国内源泉所得が課税対象となります。
(2) インドネシア個人所得税の計算方法(従来)
毎月の課税所得に対して月次で所得税を源泉徴収して、納付・申告し、納付は翌月10日、申告の期限は翌月の20日で、この月次の納税・申告を1月から12月まで行います。ただし、税率表は年の合計所得に対するものでしかないため、月額の所得を12倍して年に換算し累進税率を用いて年換算の税額を算出、それを12で割り、月ベースの税額を計算という手間が発生していました。
(3) インドネシア個人所得税の計算方法(今後)
2024年からは1月から11月までの毎月の給与等は、TER税率を用い、12月は年度末調整を行う((過払いの場合は翌月に繰越)ことになります。
具体的には、1~11月ではTERのマトリクスを参照し税率を掛け算出し、12月には1~11月の合計と年次税額との調整を行い納付します。これにより、毎月の個人の源泉所得税の計算が簡便化(12で割り戻す算出をしないので)されることになります。
(4) TERを用いた計算
① カテゴリー
TERでは、「配偶者の有無」と「扶養家族の多寡」の2つの軸で、カテゴリーA・B・Cという3つのケースに分類されます。
- カテゴリーA : 配偶者無し、配偶者無しで扶養1人、配偶者ありで扶養無し
- カテゴリーB : 配偶者無しで扶養2人~3人、配偶者ありで扶養1人~2人
- カテゴリーC : 配偶者ありで扶養3人
② 適用税率
適用税率はいずれも0~34%ですが、その適用区分は下記のとおりカテゴリー毎に設定されています(詳細割愛)。
- カテゴリーA : 月間所得が540万ルピアまで0%、14億ルピア以上で34%
- カテゴリーB : 月間所得が620万ルピアまで0%、14億5百万ルピア以上で34%
- カテゴリーC : 月間所得が660万ルピアまで0%、14億1千9百万ルピア以上で34%
(5) 改正の影響
今回の改正は、月次の源泉徴収税額のみの改正のため、従来の年税額の改正ではありません。そのため、年間の納税額において追加で税負担が個人に生じることはありません。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。