税のトピックス

2026年2月13日

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企業オーナー・富裕層に関連する税制の見直し(令和8年度税制改正大綱)

企業オーナー・富裕層に関連する税制の見直し(令和8年度税制改正大綱)

1. はじめに

令和71219日に令和8年度税制改正大綱が公表されました。

企業オーナーや富裕層に影響し得る論点が盛り込まれており、本ニュースレターでは、その中でも注目度の高い「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」の内容と影響を解説します。

 

2. 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化

① 制度の内容・背景

高所得者層ほど株式等の譲渡所得の割合が高く、所得が1億円を超えると税負担率が下がる、いわゆる「1億円の壁」問題が指摘されてきました。給与所得等は累進課税である一方、株式や不動産の譲渡益等に係る所得税率は一律15%であるため、これら税率が一律15%である所得が多いほど税負担が低くなることが背景にあります。

この状況を是正するため、令和5年度税制改正において、一定の算式に基づき追加的に所得税を課す制度が導入され、令和7年分の所得税から適用されています。今回の改正では、公平性確保の観点から同制度について見直しが行われます。

 

② 改正の内容

次の算式により計算した金額が、所得税として追加課税されます。

※1 基準所得金額とは、総所得金額及び分離課税の各種所得金額を合計したもの(申告不要制度を適用できる所得の金額を含む)をいう。
※2 基準所得税額とは、申告不要制度を適用する所得を除いて計算した場合の申告書上の所得税の額及び申告不要制度を適用した所得に係る源泉徴収税額を合計したもの(復興特別所得税を含む)をいう。

改正前は基準所得金額から3.3億円を控除し22.5%を乗じて追加税額を算定しますが、改正後は控除額が1.65億円に半減し税率も30%に引き上げられるため、追加税負担が増える仕組みに見直されています。

 

③ 改正の影響

Ⅰ. 影響額のイメージ

M&Aにより自社株を譲渡し、5億円の所得が生じたケースを例に、税制改正前後における税負担を比較します。

※ 総合課税の所得を0円、分離課税の所得を5億円と仮定して計算しています。
※ 基準所得税額は「5億円×15%」により算定しています(便宜上、所得控除及び復興特別所得税は考慮していません)。

改正前は追加納税はありませんでしたが、今回の改正により新たに約2,500万円の追加納税が発生する見込みです。

 

Ⅱ. 令和8年度税制改正が与える影響

総合課税の所得(給与など)がなく、分離課税の所得(株式の譲渡など)のみの場合、改正前は所得が10.33億円を超えるまでは影響がありませんでしたが、改正後は3.37億円を超えると影響が生じます。

なお、総合課税の所得のみの場合には、本税制の影響は生じません。

 

④ 影響が想定される場面

M&Aのような取引に限らず、資産管理会社への自社株譲渡、不動産整理に伴う売却、特定口座で保有する有価証券の売却などの場面でも影響が及ぶ可能性があります。また、相続発生後に納税資金を確保するための自社株や不動産を譲渡する場合も、想定資金が手元に残らない事態を避けるべく、事前のプランニングが必要です。

 

3. おわり

本ニュースレターでは、改正のポイントについてご説明しました。

計算方法の見直しにより、事業承継や相続対策、日々の資産運用など、幅広い場面で影響が生じる可能性があります。

したがって、早期のプランニングと専門家へのご相談をおすすめします。

 

執筆:中山 喬博 nakayamat@yamada-partners.jp

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