米国内国歳入庁(IRS)は2026年3月30日、2025年度の事前確認制度(APA)に関する統計データを公表しました。このデータには、APAの申請・締結件数、締結相手国、合意までの期間、採用された算定方法などが詳細に示されています。
1. 2025年度統計データのハイライト
- 2025年のAPA申請件数等
申請件数…178件
締結件数…110件
年末時点のAPA未処理件数…622件
申請件数は2024年より9件増加しましたが、締結件数は142件から110件に減少しました。
- APAの合意に要した期間
中央値…41.6カ月
- 締結された二国間APAの相手国の内訳 TOP3
1位…インド35%
2位…日本25%
3位…カナダ11%
なお、2023年までは常に日本が最多を占めていましたが、2024以降インドが日本を上回っています。
- 二国間APAの申請件数 TOP3
1位…インド26%
2位…日本 24%
3位…イタリア8%
申請件数においてもインドが日本を抜いて最多となりました。
- もっとも用いられている算定方法
CPM(利益比準法)/ TNMM(取引単位営業利益法)…全体の86%
- APA対象期間
5年が41件、6年が20件、7年が15件で、平均は6年。
2. 2025年の統計値と今後の対応策について
今回公表された統計値の背景には、APMAの人員不足や政府機関のシャットダウンに加え、関税政策の影響による比較可能データ不足があり、米国APAを巡る審査環境はこれまで以上に厳しさを増しています。APAにおいても、関税の影響をどのように整理し、経済分析や将来予測に反映させるかが重要な論点となっており、納税者・当税務当局双方にとってプロセスは一層複雑化しています。
一方、通常の移転価格税務調査においては、関税影響を踏まえた第三者データの制約や事業環境の不確実性を背景に、当局判断の予見性はさらに低下し、実務対応の難易度はAPA以上に高まる可能性があります。特に米国向け卸売・流通取引では、関税の影響を適切に切り分けて説明することが難しく、合理的な経済分析であっても十分に理解されないリスクが否定できません。
このような環境下では、日本企業にとって、移転価格リスクを従来以上に重要な経営課題として捉え、自社の事業内容、取引形態、関税影響の度合いに応じた対応策を戦略的に選択することが不可欠となります。APAは引き続き有効な移転価格リスクマネジメント手段の一つであるものの、その活用可否やタイミングも含め、各社の状況に即した柔軟な判断が求められる局面に入っていると言えるでしょう。
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