海外デスクレポート

2024年11月11日

ベトナムにおける親子ローンの実施形態の整理 (ベトナム)

ベトナムにおける親子ローンの実施形態の整理 (ベトナム)

ベトナムの子会社に向けて親子ローンを実施する場合の注意点を、2023815日に施行されたベトナム国家銀行(中央銀行)通達08/2023/TT-NHNNを基に、以下説明します。

 

1.  契約書

貸し手・借り手双方の署名入りの書面による契約書が必要です。データメッセージの様式で  作成された電子契約も今般認められましたが、その場合には20/2023/QH15電子取引法が規定する電子契約の各条項に従うことを要請されます。

2. 契約書上の通貨

ベトナムドン以外の外国の通貨を用いることが必要となります。今般例外としてベトナムドンを契約書上の通貨として利用することは可能となりましたが、要件は以下3点のいずれかに該当するケースとなります。

  • 借り手がマイクロファイナンス機関の場合
  • 親会社(株主)の資金源が、ベトナム子会社の事業からの配当ないしは利益の場合
  • 借り手が借入時にはベトナムドン以外の通貨で借入を行い、返済時にもベトナムドン以外の 外貨で送金決済を行う場合

3. 契約書の言語

英語や日本語といったベトナム語以外の言語を用いることは可能です。ベトナム語以外の場合、中長期ローンの登録に際してはベトナム語への翻訳版が必要となります。

4. ベトナム国家銀行への登録

借入の期間が1年以内の短期ローンは、登録が不要です。期間1年超の中長期ローンは、登録が実際の借入の前、及び、約定返済の前にそれぞれ必要となります。また、短期ローンで当初借入し、1年後の期日に返済できずに延長となった場合には登録の手続きが必要になります(期日から30日以内に完済の場合は登録不要となります)。

5. 借入の使途

使途は限定されています。

借入の期間1年以内短期ローンの場合は、会計上で短期に区分される買掛金の決済や給与や納税といった運転資金に利用できます。既存の親子ローンや海外から借入したオフショアローンの元本返済にも利用できます。一方で、ベトナム国内での借入した債務の返済に流用・充当することは出来ません。

借入の期間1年超の中長期ローンの場合は、ベトナム国外からの既存の借入・オフショアローンの返済を使途とすることは可能です。投資ライセンス認可事業へのファイナンスを使途とすることはできます。ベトナム内資の企業であれば投資ライセンスを得ていないプロジェクトへの充当も可能となっています。

 

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
  • 川越 太介

    この記事の著者

    川越 太介
    税理士法人山田&パートナーズ
    海外事業部 部長 税理士

    2006年に大阪の税理士法人にて勤務。2017年に税理士法人山田&パートナーズに入所。日本国内では相続、事業承継、組織再編やM&Aなどの業務に従事しており、現在、ベトナムにおける税務・会計サービスを提供している。主な対応可能業務は会計税務顧問、進出支援、不正調査・内部統制、DD、VAL、移転価格コンサルティングなどである。

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