税のトピックス

2026年2月6日

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医療法人の解散について

医療法人の解散について

1. はじめに

医療機関の経営者は、年々高齢化しており(診療所経営者62.5歳、病院経営者64.9歳、「厚労省データ」)、多くの医療機関の経営者が承継を検討する時期を迎えています。医療機関の承継は、親族間承継、第三者承継(MA)の順番で検討し、どちらにも至らない場合には事業の廃止を選択することになります。実際に全国の医療機関の廃止の数は増加傾向にあります。

そこで、今回は医療法人が解散する場合の、手続きと税務上の主な留意点について整理します。

 

 

2. 医療法人の解散

医療法人を解散する場合、まず診療所や病院の事業を廃止し、その後、医療法人の解散手続きを行います。解散手続きから清算手続きの完了をもって、医療法人は消滅しますが、解散の意思決定から最終清算結了まで、概ね1年~1年半程度を要するため、計画的に進めることが重要です。

(1)  医療法人の解散事由、手続き

医療法人は、定款や医療法に定められている解散事由により手続きが異なるため、行政とスケジュールを確認しながら進める必要があります。

医療法人の解散事由のうち、一般的な事由は、下記表(解散事由・手続き)のうち、「1. 定款で定めた解散事由の発生」 「3. 社員総会の決議」 「5. 社員の欠亡」になります。「1. 定款で定めた解散事由の発生」「5. 社員の欠亡」は、都道府県等への届出による解散の手続き、「3. 社員総会の決議」は認可による解散の手続きになります。

また、届出による解散と認可による解散は、下記表(主な行政手続きのフローチャート)の記載の通り、行政手続きが異なります。

 

解散事由、手続き

  項目 手続き
1 定款(寄附行為)に定めた解散事由の発生 届出による解散(都道府県知事等)
2 目的たる業務の成功の不能 認可による解散(都道府県知事等)
3 社員総会の決議(社団たる医療法人のみ) 認可による解散(都道府県知事等)
4 他の医療法人との合併 認可による解散(都道府県知事等)
5 社員の欠亡(社団たる医療法人のみ) 届出による解散(都道府県知事等)
6 破産手続開始の決定 破産手続き(裁判所)
7 設立認可の取消し 設立認可取消(都道府県知事等)

 

主な行政手続きのフローチャート

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(2)  税務上の留意点(残余財産の取扱い及び役員退職金)

持分のある医療法人

診療所を開設する持分のある医療法人の理事長兼出資者が医療法人解散する場合、通常、解散事業年度又は清算事業年度役員退職金を支給します
他方、持分のある医療法人が解散した場合、清算事業年度に、債権者に対する債務を弁済した後に、残余財産が残っている場合には、出資割合に応じて出資者に残余財産が分配することになります。

つまり、理事長は役員退職金(退職所得)として受け取るか、残余財産の分配(配当所得)として受け取るのか、受け取り方により課税関係が異なり、結果として手取額にが生じます。また、役員退職金は不相当に高額と認められる場合を除き、損金に算入されますが、残余財産の分配は剰余金の配当であるため、損金には算入されず、医療法人側においても税務上の取扱いが異なります。したがって、役員退職金として支給するか、残余財産として分配するか、個人及び法人両方の課税関係を考慮し、判断する必要があります。

持分のない医療法人

持分のない医療法人の場合も、持分のある医療法人と同様に理事長に対して退職金を支給。ただし、持分のない医療法人が解散する場合には、残余財産国等に帰属するため、持分のある医療法人とはこの点で取扱い異なります。

 

3. おわりに

医療法人を解散する場合、清算事業年度における欠損金の活用や欠損金の繰戻還付の特例等の特例の適用等の税務上の留意点のほか、従業員に関する手続き、医療機器の廃棄・売却や、診療録や会計書類の保存義務等様々な項目に留意して進める必要があります。

 

執筆:寺尾 絵里 teraoe@yamada-partners.jp

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