税のトピックス

2026年7月22日

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企業グループ間の取引に係る書類保存の特例の創設

企業グループ間の取引に係る書類保存の特例の創設

1. はじめに

令和8年度税制改正により、企業グループ内(関連者間)の一定取引について、契約書・請求書等の「取引関連書類等」に対価算定に必要な事項の記載・記録がない場合、その不足を補う書類(電磁的記録を含む)を取得・作成・保存する枠組みが整備されました。

背景には、シェアードコスト等で「支払額の根拠が追えず、税務調査で実態確認が困難」となる事例があることが挙げられています。

 

2. 創設の背景

財務省の説明資料で紹介されている事例では、海外親会社が各国子会社の間接経費を集約・配賦する取引において、調査対象法人側が「詳細不明」「根拠は親会社が保有」「保存義務はない」等を主張し、結果として実態確認ができなかったとされています。今回の整備は、この種のケースに対応する狙いがあります。

 

3. どんな取引が要注意か

本制度が想定する対象は、内国法人が関連者(※)との間で行う「特定取引」で、特に以下が典型です。

  • 工業所有権等の譲渡・貸付け(特許・ノウハウ、著作権、プログラム等)

  • 一定の役務提供(研究開発・広告宣伝、専用資産の使用・維持管理、経営管理・指導、情報提供等)

※「関連者」は移転価格税制の関連者と同様の基準で判定される整理が示されています。

 

 

4. 会社に求められる対応

ポイントは、「何の提供で、どう計算してその金額になったか」が、書類(または電磁的記録)で追える状態にすることです。社内・グループとしては、最低限次の対応が求められます。

 

(ア)

対象取引の棚卸し(一覧化)

グループ内の請求・支払のうち、シェアードコスト/管理費/ロイヤルティ/経営指導料/IT利用料/R&D・広告関連の按分等を洗い出し、取引単位でリスト化

(イ)

取引関連書類等の点検(契約書・請求書等で足りているか)

取引関連書類等(注文書、契約書、領収書、見積書等や、それらに通常記載される事項が記録された電磁的記録)に、以下が十分に残っているかを点検します。

① 資産/役務の提供の明細(何を提供、対象、期間、範囲、成果物 等)
② 対価の計算明細(単価、工数、配賦キー、計算式、計算プロセス 等)

不足があれば「補完書類(特定事項を明らかにする書類、以下同様)」を整備
既存書類に必要事項が欠ける場合は、当該事項を明らかにする書類(電磁的記録を含む)を取得または作成し、保存します。実務上は、たとえば以下が補完書類になり得ます(様式は条文で固定されていないため、社内標準化が有効)。

① 配賦計算表(算式・元データ)
② 工数表/作業報告/成果物一覧
③ 単価表・料金テーブル/改定履歴
④ グループ内契約・協定の別紙(サービス範囲 等)

(エ)

グループ内連携・業務フロー整備

特にシェアードコスト等は、提供側に根拠資料が偏在しがちなため、グループ内で必要情報が共有され、作成・提供・受領が滞りなく行われる運用(経理+事業部+法務連携)に整備することが重要と整理されています。

 

5. 重要:リスク(青色申告取消になり得る)

本制度の保存義務に違反した場合、青色申告の承認の取消事由等に該当し得る点が明記されています(=単なる努力義務ではない)。また国税庁の事務運営指針上も、帳簿書類の「保存」には税務調査での提示を含む整理が示されています。

実務的には「保存しているつもり」では足りず、提示できる状態(検索・紐づけ・所在が明確)の担保が要ります。

 

6. 施行

令和841日施行

 

執筆:塚田 渉太郎 tsukadas@yamada-partners.jp

 

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