国税庁が毎年公表している「民間給与実態統計調査」は、日本全体の給与の動向を明らかにする重要なデータです。このほど最新の「令和6年分」の結果が発表されました。
1. 「民間給与実態統計調査」とは?
この調査は、民間の事業所で働く方の給与の実態を、さまざまな角度から分析するものです。給与の総額や平均額はもちろん、雇用形態別、男女別、業種別など、詳細なデータが毎年発表されています。昭和24年から続く歴史ある統計調査で、国の税制や社会保障制度を検討する上での基礎情報としても幅広く活用されています。
2. 全体的な給与の動向:所得総額・平均給与ともに増加傾向
令和6年中に民間の事業所が支払った給与の総額は、241兆4,388億円に上り、前年と比べて約8.5兆円(3.7%)増加しました。
また、民間の給与所得者数は6,077万人。このうち、1年間を通じて勤務した正社員や派遣社員などの給与所得者は5,137万人で、その平均給与は478万円でした。これも前年と比べて3.9%の増加となり、日本の給与水準は全体的にアップ傾向にあることがうかがえます。

出典:国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査結果について」
3. 働き方による給与格差:正社員と非正社員の比較
平均給与を雇用形態別に見ると、非正社員にパート・アルバイトを含むこともあり、正社員と非正社員の間には大きな差があります。
- 正社員の平均給与:545万円
- 正社員以外の平均給与:206万円
4. 男女間の給与動向:女性の給与増加が目立つ
次に、男女別の給与を見てみましょう。
- 女性の給与所得者数:2,212万人(前年比1.0%増加)
- 男性の給与所得者数:2,925万人(前年比1.3%増加)
依然として男女間の平均給与には差がありますが、注目すべきは女性の平均給与の伸び率が男性を上回っている点です。女性の社会進出やキャリアアップが進んでいること、また労働市場全体の賃上げムードが、特に女性の給与水準引き上げに寄与した可能性が考えられます。
5. 業種別平均給与
業種によっても平均給与は大きく異なります。
【平均給与が高い業種】
- 電気・ガス・熱供給・水道業:832万円(前年比+7.4%)
- 金融業・保険業:702万円(前年比+7.7%)
- 情報通信業:660万円(前年比+1.6%)
インフラ系や専門性の高い金融、IT業界が高い水準を維持しています。
【平均給与が低い業種】
- 宿泊業・飲食サービス業:279万円(前年比+5.8%)
- 農林水産・鉱業:348万円(前年比+4.3%)
- サービス業:389万円(前年比+3.0%)
これらの業種では、パートやアルバイトといった非正社員の割合が高い傾向にあることや、労働集約型のビジネスモデルが多いことなどが、平均給与を押し下げる要因となっていると考えられます。ただし、前年比では給与が上昇している点は明るい兆しと言えます。
今回の国税庁の調査結果からは、日本の給与水準が全体的に上昇傾向にあり、特に女性の給与の伸びが顕著であることが分かりました。政府が目標に掲げる「賃上げ」や後押ししている「女性の社会進出」の効果が少しずつ数字に表れているようです。