会計検査院は、「令和6年度決算検査報告書」を内閣に提出しました。決算検査報告とは、会計検査院が1年間に実施した会計検査の成果をまとめたものです。この報告書には、令和6年度の歳入歳出決算や政府関係機関の収入・支出決算などに関する調査結果が盛り込まれています。
検査報告書は、検査済みの決算とともに内閣に送付され、内閣から国会に提出されます。国会では決算審査の重要な資料となるだけでなく、財政当局などの業務執行にも役立てられています。
同報告書によると、財務省に対して、以下のような指摘がなされました。
全国60の税務署で、納税者106人に対する税金の徴収について、計113事項、合計3億7,923万円(平成30年度から令和6年度まで)の徴収不足があったとされています。
徴収の不足額を税目別にみると、最も多い法人税が57事項1億8,853万円、次いで申告所得税が21事項8,454万円、以下、消費税19事項6,502万円、源泉所得税2事項1,919万円、相続税・贈与税は6事項1,493万円となっています。

出典:会計検査院「令和6年度決算検査報告の概要」
法人税の徴収不足57事項の内訳は、下記の通りです。
- 法人税額の特別控除に関するもの 40事項
- 交際費等の損金不算入に関するもの 8事項
- その他 9事項
報告書には下記のような具体例も紹介されています。
<事例> 給与等の支給額が増加した場合の「法人税額の特別控除額」の計算誤りにより、控除が過大となったケース
B会社は、令和4年1月~12月期の法人税申告で、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を上回るなどとして、雇用者給与等支給増加額の100分の15相当額の21,586,590円を法人税額から控除していた。
しかし、B会社は、当該事業年度及び前事業年度に雇用調整助成金を受給していた(B会社の申告書に添付された雑益、雑損失等の内訳書等により判明)が、雇用者給与等支給額等の計算に当たり、当該雇用調整助成金の受給額を除いていなかった。
これを踏まえて計算すると、適正な法人税額の特別控除額は9,434, 340円となり、12,152,250円過大となっているのに、これを見過ごしたため、法人税額12,152,200円が徴収不足になっていた。
国税局等ごとの徴収不足をみると、
- 東京国税局:69件2億3,732万円(最多)
- 関東信越国税局:15件5,253万円
- 札幌国税局:7件4,105万円
となっています。
法人税の徴収不足はほとんどの国税局で発生している一方、相続税・贈与税の徴収不足は東京国税局のみで指摘されています。税目によって徴収不足の発生傾向に特徴がみられることが報告書から読み取れます。