海外デスクレポート
2025年3月3日
タイの子会社から日本の親会社向け貸付の検討(その2)(タイ)

前回は親会社向けその1におきまして、BOIタイ投資委員会の恩典TISO / IBCを用いて、タイの外資(タイ法人の資本を50%以上、外国の株式資本が占める)企業が親会社に余剰資金を貸し付けする方法を説明致しました。今回は、親会社向けの貸付に関して、タイ商務省(Ministry of Commerce:略称MOC)の外国人事業開発局(Department of Business Development:略称DBD)に申請し外国人事業ライセンス(Foreign Business License:略称FBL)を取得する方法についてご案内します。商務省は、「タイの外資企業によるグループ・関連会社向けに貸付に関するライセンスの申請及び同省が検討・承認するポイント」のタイトルにて、貸付に限定したチェックポイントを公開していますので、以下、要約して説明します。
1. 前提条件となる資格は6項目
項目 |
内容 |
① 貸付先(借入人) |
対象はグループ・関連会社に限定 |
② タイ外資企業の本業 |
根幹となる事業は貸付以外であること(本業が貸付では資格外) |
③ タイ外資企業の形態 |
銀行と同じく公衆から資金を集めて融資をする事業ではないこと |
④ 貸付サービスのフィー |
貸付行為のアレンジメントフィーの多寡は問われない |
⑤ 目的 |
事業の上で借入人と貸付人の合意があること グループ内部で資金調達の場合では、銀行から調達する場合と比べて煩雑さが減少するなどの利点があること |
⑥ 財務の健全性 |
貸し手、借り手、双方が資金供与と返済に関して懸念がないこと |
2. 申請書に記載する項目
項目 |
内容 |
① 貸付先(借入人) |
社名を明記 |
② 貸付先(借入人が海外) |
国籍と社名、融資契約書、貸付期間(返済期間)の記載 |
③ 主要項目 |
貸付限度額、貸付金額、金利、貸付期間 |
④ 金利:貸付原資が自己資金の場合 |
借入人の国での商業銀行の借入期間に応じた定期預金金利を下回らない |
⑤ 金利:貸付原資が借入の場合 |
上記④に加え、貸付の原資となる当該借入金の金利を下回らない |
3. 商務省が検討する蓋然性のポイント
ポイント |
備考 |
① 貸付事業が本業ではない旨の審議 |
現状の売上の実態から判断をする |
② 貸付先がグループ・関連会社向けかどうか |
社名や相関図からチェックする |
③ グループ内での合理性が見出せるかどうか |
銀行から借入の場合の金利、与信を得る難易度や手続きの負荷とグループ内での柔軟な融資を比較、 |
④ グループ内で、本件の借入・使途が当該グループの実業をサポートする観点で有効に活用されるのかどうか(備考欄に事例あり) |
・自動車部品の製造会社が同グループの販売会社に貸付 ・家電製造販売会社がグループの資金管理する財務センターに貸付 |
⑤ 財務の健全性 |
貸し手・借り手とも決算3期分 |
4. ライセンス取得に向けた留意点
留意点 |
内容 |
① 貸付一本毎の個別 |
申請時に借入契約書を添付することからも契約書毎の申請。纏めて包括承認ではない。 |
② 貸付後、貸付期間が延長の場合 |
個別承認のため、延長の申請が必要 |
③ 資本負債バランス |
承認時に比率、資本1:負債7(以下)が課される |
④ 承認時MOC行政手数料 |
最大250,000バーツ(資本金の大きさに応じる、資本金千バーツにつき5バーツ) |
5. BOIのTISO / IBCとの比較
|
TISO |
IBC |
FBL(本稿) |
業務 |
関連会社支援 |
地域本社機能 |
個別申請 |
経費 |
年間10百万バーツ以上 |
- |
手数料1回あたり250千バーツ |
従業員 |
- |
10人以上 |
- |
貸付に限った申請 |
× |
× |
〇(本業は別) |
貸付の包括認可 |
〇 |
〇 |
× |
貸し手の事業が、タイ国内のグループ・関連会社への支援業務やアジアの本部機能を有して域内支援業務を行っている場合は、追加でBOIのTISO / IBCに貸付業務の申請を行うことが可能で実効性も高まると考えられます。また、FBLの場合は、単発のプロジェクトで相応に大きな金額を複数年の期間で親会社を含むグループ・関連会社に貸付を行う場合、且つ、統括業務に貸し手が携わっていない場合に有効な選択肢と考えられます。
参考:商務省外国人事業局 cda1109af1094f550047ce6d49.pdf
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
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この記事の著者
額田 正憲
税理士法人山田&パートナーズ
海外事業部1992年大手都市銀行に入行以来、タイ15年半、フィリピン2年勤務、東京でのアドバイザリー業務5年をもってアジア・オセアニアでのビジネス環境の改善に従事。2024年税理士法人山田&パートナーズ入所。各地域での経営環境・税務課題の解決に向けた支援に取り組む。
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