1. はじめに
2024年5月14日衆議院本会議にて「公益社団法人及び公益財団法人に関する法律」が可決・成立し、同月22日に公布されました。2025年4月1日の施行に向けて2024年12月20日には「公益認定等ガイドライン」及び「公益法人会計基準等」が公表されました。
2. 「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の改正
公益法人は、民間公益を担う主体として大きな潜在力を有していますが、現行制度の財務規律や手続きの下では、その潜在能力を発揮しにくいとの声が多いため、財務規律等を見直し、法人の経営判断で社会的課題への機動的な取組を可能にするとともに、法人自らの透明性向上やガバナンス充実に向けた取組を促し、国民からの信頼・支援を得やすくすることにより、より使いやすい制度へと見直しを行い、民間公益の活性化が期待されます。
主な改正ポイント
(1) 自律的なガバナンスの充実、透明性の向上
① 外部理事・外部監事
法人運営が内輪の者だけで行われることによる法人の私物化を防止し、理事会運営の活性化等を図る観点から、理事のうち1人以上が外部理事であること(※小規模法人の適用除外あり)、監事(複数いる場合は監事のうち1人以上)が外部監事であること、が求められます。
※ 外部理事が適用除外となる基準
収益:3,000万円未満、かつ費用・損失:3,000万円未満
外部理事になれない者
1 |
当該法人又はその子法人の業務執行理事又は使用人、及び、その就任の前10年間当該法人等の業務執行理事又は使用人であった者 |
2 |
公益社団法人の場合 当該法人の社員(当該社員が法人である場合はその役員及び使用人) |
3 |
公益財団法人の場合 当該法人の設立者(設立者が法人である場合は、当該法人及びその子会社の役員及び使用人) |
外部監事になれない者
1 |
外部理事になれない者1〜3に加えて、当該法人の業務執行理事以外の理事であった者
|
【 経過措置等 】
- 外部理事・監事は、施行日(2025年4月1日)に在任するいずれかの理事又は監事が交代の際に選任すればよいこととされています。
- 適用除外について、決算書の作成により基準を超えることが判明した場合その時点から設置義務が生じます。基準超えが予想される場合には、予め外部理事の設置及び選任をしておくなどの対応が求められます。
- 突発的に基準を超えた法人が直ちに外部理事を選任することは容易ではないため、外部理事の設置に係る監督については、法人の置かれた状況や諸藩の事情を考慮して行うこととされています。
(2) 財務規律の柔軟化・明確化
① 収支相償原則の見直し
- 収支相償原則を見直し、財源の有効活用という趣旨が明確になるよう収支均衡を規定
- 収支均衡の判定については、単年度ではなく中期的期間で行う趣旨を明確化
- 公益充実資金※を創設
※「特定費用準備資金」及び「資産取得資金」を結合し、より使いやすい制度として創設
② 遊休財産(使途不特定財産)規制の見直し
- 保有の上限となる1年分の公益目的事業費は、過去5年間の事業費の平均額を基本に
- 公益目的事業継続予備財産(災害等の予見し難い事由に対応し、公益目的事業を継続するために必要となる公益目的事業財産)※を保有制限の対象から除外
※ 公益目的事業継続予備財産とは
予備財産の要件
1 |
資金保有の必要性(法人の事業内容、資産・収支の状況、想定する公益目的事業の継続が困難となる事態、平時の取組の状況などの事情を踏まえて検討) |
2 |
必要額の算定 |
3 |
予備財産額が必要額を超えないこと |
法人による公表
1 |
上記1〜3の内容を毎事業年度の経過後3ヶ月以内に、法人自ら公表 |
3. 公益法人会計基準の見直し
新会計基準の主な見直し項目
(1) 貸借対照表
- 資産について、流動資産・固定資産の区分で表示(基本財産・特定資産は注記で区分)
- 使途拘束資産(資産)、一般純資産・指定純資産(純資産)を区分
- 内訳表は注記で記載
(2) 活動計算書 ※正味財産増減計算書から変更されます
- 本表では一般純資産・指定純資産を区分せず、全体の増減を記載
- 費用科目は活動別分類(公1事業費、収1事業費、管理費、等)で表示
- 内訳表は注記で記載
(3) 注記・附属明細書
- 貸借対照表関係:会計区分別内訳、資産及び負債の状況、使途拘束資産の内訳
- 活動計算書関係:財源区分別内訳、一般純資産の会計・事業区分別内訳、指定純資産の内訳、控除対象財産の発生年度別残高等、事業費・管理費の形態別区分
【 経過措置等 】
新しい会計基準については、2025年4月1日以降に開始する事業年度から適用されますが、2028年4月1日前に開始する事業年度までに適用を遅らせることが出来ます。
4. 終わりに
公益法人制度改正については、全ての公益社団法人、公益財団法人が対象になり、各行政庁へ提出する事業報告書等のフォーマットのみでなく、公益法人会計基準も見直されます。
専門的な知識が必要とされますので、是非、弊社担当者までお気軽にお問合せください。
執筆:大橋 智哉 ohashit@yamada-partners.jp