税のトピックス

2026年7月17日

  • ニュースレター

相続登記の義務化と所有不動産記録証明制度

相続登記の義務化と所有不動産記録証明制度

1. はじめに

近年、不動産登記簿等を確認しても所有者が判明しない「所有者不明土地」が全国的に増加し、周辺の環境悪化や民間取引・公共事業の阻害が生ずるなど、社会問題となっています。その主たる原因の一つとして、相続が発生したにもかかわらず、不動産が被相続人名義のまま長期間放置され、相続登記がされないことが挙げられます。このような状況を踏まえ、所有者不明土地の発生を防ぐ方策として、相続登記の申請が義務化されました。

また、相続人が相続登記を適切に履行するためには、被相続人が所有していた不動産の全部について把握する必要がありますが、その把握が容易ではない場合も少なくありません。そこで、被相続人が登記簿上の所有者として記録されている不動産をリスト化して証明する「所有不動産記録証明制度」が創設されました。

 

2. 相続登記

(1)相続登記の義務化

相続登記とは、被相続人が所有していた土地や建物について、登記簿上の名義を被相続人から相続人へ変更する手続です。これまで相続登記は任意でしたが、登記の放置による所有者不明土地の増加を防ぎ、それに伴う社会的な支障を抑えるため、令和6年(2024年)4月1日から、相続登記の申請が法律上の義務になりました。

 

(2)申請期限と過去の相続への適用

相続(遺言による場合を含む)により不動産を取得した人は、原則として、自分が相続人であること及びその不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
また、遺産分割協議により不動産の取得者が決まった場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に基づく相続登記を申請しなければなりません。
正当な理由がないにもかかわらず、これらの期限内に相続登記を行わない場合には、10万円以下の過料の対象となります。
なお、この義務は、令和6年4月1日以前に発生した相続にも適用されるため、過去に相続した不動産で、相続登記が未了のものについても、本制度は適用され、原則として、令和9年(2027年)3月31日までに登記を申請する必要があります。

 

(3)相続人申告登記

相続登記の申請義務を簡易に履行するための方法として「相続人申告登記」が令和6年(2024年)4月1日から始まりました。相続人間で分割協議がまとまらない場合など、期限内に正式な相続登記の申請ができないときに利用できる制度です。各相続人は単独で(他の相続人分を含めた代理申請も可能)、自らが相続人である旨を法務局に申し出ることで義務違反による過料を回避することができます。もっとも、この申告は権利関係を公示するものではありません。そのため、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には、別途、正式な相続登記を行う必要があります。

また、その後に遺産分割が成立したときは、遺産分割の日から3年以内に、その内容に応じた登記を改めて行わなければなりません。

 

3. 所有不動産記録証明制度 

(1)制度の概要

所有不動産記録証明制度とは、特定の人が登記簿上の所有者として記録されている不動産について、法務局が一覧的にリスト化して証明書として交付する制度です。これまでは、登記記録が土地や建物ごとに作成されていたため、「被相続人が全国のどこに不動産を持っていたか」を一括して確認することは難しい状況でした。この制度により、相続人が被相続人名義の不動産を把握しやすくなり、相続税申告や相続登記の漏れの防止や、登記申請に係る負担の軽減が期待されます。

 

(2)開始時期・請求できる者・手数料

この制度は、令和8年(2026年)2月2日から開始しています。所有不動産記録証明書は、不動産の所有権の登記名義人本人のほか、その相続人その他の一般承継人、またはこれらの代理人により請求することができます。請求は、法務局の窓口、郵送、オンラインで行うことができ、手数料は検索条件1件・証明書1通ごとに、書面請求の場合は1,600円、オンライン請求の場合は交付方法に応じて1,470円又は1,500円とされています。

 

(3)利用時の注意点

この制度を利用しても、すべての不動産が必ず漏れなく判明するとは限りません。証明書は、請求書に記載した氏名や住所などの検索条件に基づいて作成されるため、登記簿上の住所が古いままの場合、旧姓で登記されている場合、氏名や住所の表記が一致しない場合などには、検索結果に出てこない可能性があります。
実務上は、所有不動産記録証明書だけに頼るのではなく、固定資産税納税通知書、名寄帳、権利証、登記識別情報通知、戸籍の附票なども併せて確認することが大切です。

 

執筆:川村 理重子 kawamurar@yamada-partners.jp

 

税のトピックスに戻る