1. はじめに
2025年に日経平均株価が50,000円台へ乗ったことが大きく取り上げられましたが、2026年に入り60,000円台、そして、70,000円台と記録が次々と塗り替えられています。今後の株価動向については、AI半導体需要、円安、中東情勢といった不透明な部分がありますが、株式投資による資産形成のトレンドは当面の間続くのではないでしょうか。
このような株価が上昇基調のときこそ、注意しなければいけない点として税制の取り扱いがあります。特に日本では「源泉徴収ありの特定口座」という便利な制度があるため、税制のことをつい失念しがちです。
そのため、今回は株式投資による利益に対する税制の注意点について解説いたします。
2. 日本の株式投資の税制
日本において株式投資の譲渡益に関する税制は、2003年から特定口座制度が開始されました。税率については当初軽減税率が導入されていましたが、現在は株式投資の譲渡益に対して所得税、住民税、復興特別所得税が20.315%課税されます。そして、「源泉徴収ありの特定口座」を選択しておけば、源泉徴収により原則申告不要となるため、確定申告の手間が省けて非常に便利です。
株式投資の譲渡益については、給与や不動産収入といった他の所得とは分離し、上記の単一税率で税金が課されるため、同じ所得金額であったとしても給与や不動産所得よりも税率が低くなることが多くあります。そのため、所得金額が多いにもかかわらず、所得金額が少ない納税層よりも所得税の税負担率が低いという「1億円の壁」問題が指摘されていました。その結果、株式の譲渡所得といった他の所得とは分離される所得が極端に多い納税層に対して追加で税負担を課すミニマムタックス課税が2025年の所得税から適用されています。しかし、株式の譲渡所得のみが所得金額と仮定した場合、株式投資の譲渡益が10.33億円を超えなければ税負担が追加で発生しない制度のため、株式投資家にとっての注目度はそこまで高くありませんでした。そのような状況下で、2026年度の税制改正により2027年の所得税からミニマムタックス課税に大きな改正が行われることとなりました。
ミニマムタックス課税のイメージ
〔(給与所得や不動産所得等)+(株式投資の譲渡益等)-控除額※1〕×税率※2=最低限負担すべき所得税
最低限負担すべき所得税-当初の所得税額=追加納税
※ 1 控除額 3.3億円(2027年から1.65億円)
※ 2 税率 22.5%(2027年から30%)
3. 2027年の株式投資の税制 ~ミニマムタックス課税~
2027年の所得税から適用されるミニマムタックス課税の改正については、税負担が追加で発生する納税層が拡大する内容となります。具体的には、株式の譲渡所得のみが所得金額と仮定した場合、従前は10.33億円超が対象だったものが、2027年からは3.37億円超が対象となります。そのため、ミニマムタックス課税の影響を受ける納税層が大きく広がることが見込まれます。また、2027年の改正が適用された場合の従前の所得税額等と比較した場合の影響額は下記となります。
税額単位:百万円
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所得金額
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2026年 所得税額等(A)
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2027年 所得税額等(B)
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改正による影響額 (B-A)
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3億円
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45
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45
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0
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4億円
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61
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70
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9
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5億円
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76
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101
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24
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6億円
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91
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131
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39
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7億円
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107
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161
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54
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8億円
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122
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191
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69
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9億円
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137
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222
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84
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10億円
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153
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252
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99
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※総合課税の所得がなく、株式の譲渡所得のみの場合で、復興特別所得税を考慮して計算
4. 実務上の注意点
ミニマムタックス課税の改正による影響は、2027年の所得税から適用されるため、株式投資の譲渡益については2026年中の売却による利益確定による納税や2027年以後は複数年に分けて売却するなどの対応策が重要となります。当該制度は、「源泉徴収ありの特定口座」を選択しており、申告不要を選択したとしても株式の譲渡益は所得金額として対象となるため、源泉徴収以外の税金がかからないという思い込みで、大きな税負担が発生してしまわないように注意が必要です。
執筆:大泉 匡弘 oizumim@yamada-partners.jp