税のトピックス

2023年6月30日

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第1回:二酸化炭素排出量の算定準備を始めてみませんか。

第1回:二酸化炭素排出量の算定準備を始めてみませんか。

二酸化炭素排出量の算定準備を始めてみませんか。

 

第1回:二酸化炭素排出量の算定準備を始めてみませんか。

 

皆さん、最近カーボンニュートラルという言葉をよく耳にしませんか?

カーボンニュートラルとは、私達の生活を便利にする製品の製造や電気等のエネルギー作成時等に発生する二酸化炭素を中心とした温室効果ガスの排出量とそれを吸収する植林・森林管理等による吸収量を均衡させることを意味します。もう少し分かりやすく言いますと、二酸化炭素を中心とした温室効果ガスの排出量を可能な限り削減するとともに、削減できなかった分(排出量)については吸収量を同程度まで増加させることで、実質ゼロにすることをいいます。

地球規模の課題である気候変動問題の解決にむけ2015年に締結されたパリ協定が採択され、今は世界共通の長期目標となっています。日本では、全世界的なカーボンニュートラルの実現に向けた動きに合わせる形で2020年10月に2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言しております。日本におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みとして耳にすることとして、以下のような取り組みを行っております。

 
・自動車メーカーが電気自動車(EV)の導入の積極的な推進(東京都の小池都知事は2020年12月に、2030年までに東京都で販売される新車全てをEVやハイブリッド車(HV)に切り換える方針を発表)
・スターバックスコーヒージャパン株式会社が日本初の環境配慮型店舗を2021年12月に皇居外苑にオープン
・イオン株式会社が国内の小売業や食品大手メーカーでは初の二酸化炭素を排出しない食品(2024年よりイチゴを生産販売予定)を売り出すことを発表

 

各社により対応は様々ですが、動き出しが始まっております。一方で、何かを始めなければと思うものの、そもそもまず何から始めたら良いか分からない企業様も多いのではないでしょうか。まずは、その第一歩として、二酸化炭素排出量の算定準備を始めてみませんか、というタイトルで今回はいろいろな基礎知識を紹介していきます。ぜひカーボンニュートラルに向けた取組みを始める一つのきっかけにしていただけますと幸いです。

 

1 二酸化炭素排出量などの専門用語の紹介

 

そもそも、カーボンニュートラルを考えるうえでは温室効果ガス排出量、サプライチェーン排出量という専門用語が使われることが多いです。

まず、温室効果ガスとは、二酸化炭素に限らず大気中に含まれるメタンやその他ガスの総称となります。つまり、二酸化炭素排出量は温室効果ガス排出量の主要な一部となります。

次にサプライチェーン排出量とは、各社の直接的な温室効果ガス排出量だけでなく、各社の事業に伴う間接的な温室効果ガス排出量も対象としており、事業活動に関わるあらゆる温室効果ガス排出量を合計した排出量を意味しています。 つまり、サプライチェーン排出量とは、原材料の調達から始まり、製造→物流→販売→廃棄など、一連のサプライチェーン全体から発生する温室効果ガス排出量の合計のことです。従って、サプライチェーン排出量を算定することはその範囲が多岐に渡ることから、非常に難しいこととなります。

なお、サプライチェーン排出量はさらに以下の通り3つに分類することができます。

 

スコープ1:燃料の燃焼、工業プロセス等、各社による温室効果ガスの直接排出

スコープ2:各社以外の他者から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出

スコープ3:スコープ1,2以外の間接排出(各社の活動に関連する他社の排出)

 

ここでお分かりの通り、サプライチェーンを大きく三つのスコープ(範囲)に分けておりますが、スコープ3に比べるとスコープ1,2の方が算定は容易となります。

 

2 サプライチェーン排出量の算定や削減が進んでいる業界の紹介

 

業界ごとに算定や削減の進捗は様々ですが、弊社でリサーチしたところ、医薬品業界、化学業界、食料品業界、電機・電子業界、小売業界は比較的取組みが進んでおります。

そのなかで具体例を一つ紹介させていただきますと、新型コロナウイルスのワクチンメーカーとしても話題になった、大手医薬品メーカーのアストラゼネカ社は、2025年までにカーボンニュートラルを達成すると2021年11月に発表しております。そのうえで、同社は日本国内事業所と工場の消費電力を既に100%再生可能エネルギーに移行しております。また、2025年末までに営業車両の全てを電気自動車に切り替える計画を開始し、順次切り替えを実施しております。つまり、取組みが進んでいる企業は、もう既に対策を講じ削減を実現しております。

取組みが進んでいる企業の代表的なサプライチェーン排出量削減例は、以下の通りとなりますので、ぜひご参考にしてみてください。

 

・太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーへの移行

・ハイブリッド車や電気自動車の導入

・省エネ活動(LED照明等の導入)

 

 

3 二酸化炭素排出量の可視化ツールの紹介

 

最後に、二酸化炭素排出量の可視化ツールを紹介させていただきます。こちらは経済産業省が公表している「エネルギー起源二酸化炭素排出量等計算ツール」となり、経済産業省のホームページより入手が可能となります。カーボンニュートラルに向けた設備投資を行う際に減税制度を活用する場合に、こちらのツールを参考に二酸化炭素排出量等が算定できるようにと考えられて用意されたツールとなっております。

詳細はぜひ用意されているマニュアルをご確認いただければと思いますが、まずは、主要な一事業所の直近1ヶ月分の電気料金明細をお手元にご用意下さい。そして、以下の手順で、一事業所あたりの1ヶ月分のおおよその二酸化炭素排出量を算定して頂き、可視化してみましょう。

 

<算定手順>

  • 電気料金明細記載の電気事業者向けに、温対法の二酸化炭素排出量の計算をする際に使用するメニューを教えてほしい、と依頼のうえ確認する。
  • 「エネルギー起源二酸化炭素排出量等計算ツール」のシート01を開き、「電気の入力欄」の「電気事業者メニュー」欄に上記①の内容を入力する。
  • マニュアル記載の環境省ホームページURLを開き、算定年度の「電気事業者別排出係数一覧」記載の上記①に該当する係数を確認する。
  • 「エネルギー起源二酸化炭素排出量等計算ツール」のシート01上の、「電気の入力欄」の「基礎排出係数」「調整後排出係数」欄に上記③の係数を入力する。
  • 「エネルギー起源二酸化炭素排出量等計算ツール」のシート01上の、「電気の入力欄」の「使用量」欄に電気料金明細記載の使用量を千kWH単位で入力する。
  • 「エネルギー起源二酸化炭素排出量等計算ツール」のシート02上の末尾の、「CO2排出量 tCO2」欄を確認のうえ、一事業所あたりの1ヶ月分のおおよその二酸化炭素排出量を認識する。

 

まとめ

今回は、二酸化炭素排出量の算定準備を始めてみませんか、というタイトルでカーボンニュートラルについての基礎知識を紹介させていただきました。ぜひカーボンニュートラルに向けた取組みを始める一つのきっかけにしていただけますと幸いです。

 


 

より、詳しい情報及び取り組みにつきましては、下記の弊社執筆担当者までお問い合わせください。

 

執筆担当者:東上 晃之 higashiuea@yamada-partners.jp

執筆担当者:渡邊 悠介 watanabey@yamada-partners.jp

執筆担当者:安河内 千里 yasukouchic@yamada-partners.jp

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