税のトピックス

2021年11月8日

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脱炭素化 税理士の役割から考える【第1回】

脱炭素化 税理士の役割から考える【第1回】

第1回:脱炭素化=産業構造の転換(産業革命) 日本の取り組みと覚悟

 世界はカーボンニュートラルに向け動き出しました。 脱炭素化社会への移行は、産業構造の転換(産業革命)ゆえに、今後、社会経済の根本的な変革が避けられないといえます。

 今が日本の第4次産業革命の分かれ道であると考え、日本の脱炭素化に対する取り組みを、今後継続的に発信していきます。
 今回は、第1回として脱炭素化の動きと日本の取り組みの概要を紹介します。

 

1 脱炭素化の動き

 脱炭素化に向けて日本でも本格的に動き出しています。 国は、温暖化ガスの排出量を2030年までに2013年比で約45%減にすると公言しています。2050年にゼロにするためには、再生可能エネルギーの拡大や排出量取引制度の導入、技術投資などが必要となり、特に太陽光、洋上風力などの再生エネルギーの大幅な増加が求められます。
 国は2040年までに洋上風力の発電能力を原子力発電所45基分に上る4,500万キロワットにまで増やす計画を掲げています。

 脱炭素化は世界的な流れですが、そのカギを握るのは、次の3つの切り口とされています。

(1)主流は、再生エネルギー、蓄電技術と水素
 伝統的な石炭火力と原子力発電は縮小・現状維持となり、太陽光、洋上風力などの再生エネルギー、蓄電技術と水素が主流となります。


(2) カーボンプライシング(炭素の価格付け)制度の普及
世界でカーボンプライシングが広がりつつあります。ドイツでは新たな炭素税を創出して、その財源の一部は社会保険料の引き下げに使用されています。
  カーボンプライシングが実現できれば、十分な削減の取り組みが出来ない企業は、市場から購入する排出量の枠の価格を組み込んで投資計画などの意思決定をくだせるようになり、 起業家や投資家も長期的見通しを立てやすくなります。


(3) 国境調整措置の導入
 国境調整措置は、温暖化対策が不十分な国からの輸入品に価格を上乗せする措置で、国境炭素税とも呼ばれるものです。 これにより、国際的な新しい課税の枠組みが登場する可能性があります。
 EUは、2023年までに規制が緩い国からの輸入品に対して、生産時に出した  二酸化炭素(CO²)の量に応じて関税や排出枠の購入義務を課す「国境炭素調整」を導入する方針 です。

 

2 日本における取り組み

 はじめに、日本の電源構成をもとに日本を取り巻く状況を概観すると、
 ・力を入れた原子力発電は2011年の東日本震災以降停滞。
 ・太陽光パネル及び蓄電池は中国勢が伸びる。
 ・風力発電も欧州勢が強い。
 ・地熱発電の技術力高いがコストが高い。
 ・日本に競争力のある(コストという課題は別として)水素やアンモニアの市場では脱炭素化の国際的なルールにおいて現時点で重視されていない。
 ということがあげられます。

 

日本の電源構成

 

このような中で、 日本は下記のとおり、取組んでいます。


(1) 改正地球温暖化対策法の制定
 改正地球温暖化対策推進法が制定され、 その法律のもと、下記の目標・計画が示されました。
⓵ 「促進区域」を市町村が指定
 再エネルギーの導入に力を入れる区域として、市町村が「促進区域」を指定します。
 促進区域では、発電所の設置に必要な環境影響評価(アセスメント)といった時間のかかる手続きが簡素化され、事業者は参入しやすくなるとしています。
 → より多くの風力や太陽光発電が必要となるが、そのスペースが確保出来るかが課題。 
②  送配電網の整備
 再生エネルギーの普及拡大に向けた足かせの1つが送配電網の整備といわれています。
 経産省では地域間送電網の容量を2倍にする計画案をまとめました。
 → 事業費は数兆円になる可能性があり、費用をどう賄うかが課題。
③  蓄電池(余った電気を一時的に蓄えるもの)、次世代原子炉、核融合炉の開発
④ 長期的な視点から、水素、アンモニアなどの技術の強化


(2) 脱炭素化に向けた政策手段
 目標・計画の実現に向けた政策手段は、下記のとおりです。
⓵ 設備投資に係る補助金(研究開発・設備投資支援)2兆円の予算計上

② 「経財政運営と改革の基本方針2021」における提言
  ・ 脱炭素を軸として成長に資する政策を推進する。
  ・再生可能エネルギーの主力電源化を徹底する。
  ・公的部門の先導により必要な財源を確保しながら脱炭素実現を徹底する。
  ・上記のため、グリーン成長戦略に基づき、洋上風力、水素、蓄電池など重点 分野の研究開発、設備投資を進める。
  ・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の活用等。


③ 国や自治体が所有する土地等への太陽光パネルの設置
 政府は2030年までに国や自治体が持つ建築物や土地の半分に太陽光パネルを 設置する方針です。2040年には100%導入を目指しています。
 2030年度の温暖化ガス排出を2013年度比 で46%削減するには、短期間で設置できる太陽光パネルの大量導入が欠かせないと考え て、公共部門が率先して設置することを予定しています。


④ 荒廃農地の転用緩和
 農林水産省は再生可能エネルギーの活用を促すため、荒廃農地を太陽光発電など再生可能エネルギー設備の設置場所に転用する場合の要件を緩和します。
 脱炭素化に向けて、今後は太陽光発電などの再生可能エネルギーが主流になる見通しですが、太陽光発電は用地不足や送電線接続の制約が課題で、今後は導入が伸び悩むと懸念されています。先進的な自治体でも太陽光パネル設置率は20%、平均で10%、政府の建物も2%程度にとどまるとしています。
  第2回は「カーボンニュートラル実現の取組みと投資促進税制の活用の概要」をご紹介します。

 


 

より、詳しい情報及び取り組みにつきましては、下記の弊社執筆担当者までお問い合わせください。

執筆担当者:徳山 義晃 tokuyamay@yamada-partners.jp
執筆担当者:菱沼 真也 hishinumas@yamada-partners.jp
執筆担当者:工藤 雄輔 kudoy@yamada-partners.jp
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