税のトピックス

2024年1月26日

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グループ通算制度・グループ法人税制

グループ通算制度・グループ法人税制

第8回:完全支配関係(100%資本関係)がある場合に適用可能な制度

1. はじめに

グループ経営を行っている企業グループの形はさまざまで、各グループ会社の資本関係(持株比率)もグループへの加入経緯などにより各社異なると思います。ところで、法人税では、企業グループ内での結びつきが特に強いと思われる100%資本関係がある法人間の取引については、通常と異なる税制が適用されます。本ニュースレターでは、100%資本関係がある場合に適用することができる「グループ通算制度(選択制)」、また100%資本関係がある場合に適用される「グループ法人税制(強制適用)」について紹介します。

 

2. グループ通算制度 (任意適用 (選択制))

(1) グループ通算制度とは

グループ通算制度とは、完全支配関係(100%資本関係)のある企業グループ(通算グループ)内の各内国法人の所得(利益)と欠損(損失)を相殺する損益通算が可能となる制度です。従来から同様の制度として連結納税制度がありましたが、令和2年度税制改正において、連結納税制度が見直され、グループ通算制度へ移行しました(令和441日以後開始事業年度から適用開始)。

グループ通算制度の適用を受けるためには、国税庁長官の承認を受ける必要があります。つまり、グループ通算制度は、各企業グループが任意に適用を選択する制度です。なお、グループ通算制度の適用を受ける場合は、完全支配関係(100%資本関係)がある企業グループ内のすべての法人が適用する必要がありますので、損益通算対象とする法人を任意に選択することはできません。

 

(2) グループ通算制度の主なメリット・デメリット

グループ通算制度の最大の効果・メリットは、企業グループ内の各社の所得と欠損を相殺する損益通算です。また、グループ全体計算により外国税額控除や研究開発税制の控除額が単体納税よりも多くなる場合がある等、その他にもグループ通算制度適用の効果・メリットがあります。一方で、繰越欠損金の切り捨てや時価評価、事務負担の増加等、メリットだけでなく留意点・デメリットもありますので、グループ通算制度適用の選択は、事前に各社の状況に応じてメリット・デメリットを比較検討した上で判断する必要があります。

 

メリット

① 損益通算
通算グループ内の各社の所得と欠損を損益通算できる

② 欠損金の早期解消
グループ全体計算を行うことにより、単体納税よりも欠損金の控除限度額が増加する場合がある(大法人の場合)

③ 外国税額控除・研究開発税制(試験研究費の税額控除)
グループ全体計算を行うことにより、単体納税よりもグループ全体の控除税額が増加する場合がある
(控除税額が減少する場合もある)

デメリット

① 欠損金の切り捨て
グループ通算制度開始、通算グループへの加入等に伴い、繰越欠損金が切り捨てられる場合がある

② 時価評価
グループ通算制度開始、通算グループへの加入等に伴い、資産の時価評価が必要となる場合がある

③ 中小法人、中小企業者向け優遇措置の制限
通算グループ内に1社でも資本金1億円超の会社がある場合等はグループ内の全社について優遇措置の適用不可

④ 事務負担の増加
税金計算が複雑になる、税金計算システムの導入コスト等

 

3. グループ法人税制(強制適用)

グループ法人税制とは、完全支配関係(100%資本関係)がある法人グループに適用される制度の総称です。グループ法人税制は、選択制であるグループ通算制度とは異なり、完全支配関係(100%資本関係)がある法人間の取引について強制適用されます。

グループ法人税制に含まれる主な制度は次のとおりです。譲渡損の繰り延べや、中小法人向け特例措置の適用制限等、一部不利な制度もありますが、基本的にはメリットのある制度と言えます。

 

主なグループ法人税制の各制度

1

100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等

完全支配関係(100%資本関係)がある内国法人間で譲渡損益調整資産()の譲渡を行った場合、譲渡損益を繰り延べる(譲受法人が再譲渡等を行うまで繰延べ)

帳簿価額1千万円以上の固定資産、土地、有価証券(売買目的有価証券除く)、金銭債権、繰延資産

2

100%グループ内の法人間の寄附金・受贈益

法人による完全支配関係がある内国法人間で寄附を行った場合、寄附を行った法人は、その支出した寄附金の額が損金不算入となり、寄附を受けた法人は、その寄附による受贈益の額が益金不算入となる

3

100%グループ内の法人からの受取配当等の益金不算入

完全支配関係がある法人間の配当等の額については、その全額が益金不算入
(完全子法人株式等に係る配当等は
100%益金不算入(負債利子控除なし))
4

100%グループ内の法人間の現物分配

内国法人が完全支配関係がある内国法人に現物分配を行った場合、適格現物分配に該当し、移転資産を帳簿価額により譲渡したものとして取り扱う(譲渡損益を認識しない)

5

残余財産が確定した場合の繰越欠損金の引継ぎ等

完全支配関係がある法人(例:100%子会社)が清算し、残余財産が確定した場合、株主である法人(例:100%親会社)が、その清算した法人の繰越欠損金を引き継ぐ
(一方で、親会社において子会社株式消滅損は損金不算入)

6

100%グループ内の子法人に対する中小法人向け特例措置の適用制限

資本金額5億円以上である法人と完全支配関係がある法人等は、中小法人向け特例措置の適用を受けることができない

主な中小法人向け特例措置

  • 法人税の軽減税率
  • 特定同族会社の特別税率(留保金課税)の適用除外
  • 欠損金等の控除限度額
  • 欠損金の繰戻しによる還付制度
  • 貸倒引当金の繰入れ
  • 貸倒引当金の法定繰入率の選択
  • 交際費等の損金不算入制度における定額控除制度

 

4. おわりに

完全支配関係(100%資本関係)がある企業グループについては、企業グループとしての一体経営の実態に即した課税を目的として、グループ通算制度やグループ法人税制が設けられています。これらの税制は、基本的にグループ内取引について、グループ外への移転等の時まで損益を繰り延べる制度です。したがって、これらの税制を活用することにより、企業グループ内の資源配分(人・モノ・カネの移動)を税の観点からも効率的に行うことができます。

グループ内の子会社や関係会社との資本関係を100%にする方法には、売買による株式取得だけでなく、株式交換等の組織再編、種類株式を活用した方法などもあります。それぞれ会社法等に基づく手続きや課税関係も異なりますので、現状の資本関係や株主との関係性など、個別の状況に応じて最適な方法を検討する必要があります。より詳しい情報につきましては、弊社担当者までお気軽にお問い合わせください。

 

執筆: 大山 哲広 ooyamaa@yamada-partners.jp

  • 大山 哲広

    この記事の著者

    大山 哲広
    税理士法人山田&パートナーズ
    パートナー 税理士

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