1. はじめに
法人版事業承継税制の特例措置(以下「本制度」)について、適用期限が迫っています。
本制度では、特例承継計画の提出期限が令和8年3月31日まで、特例措置の適用期限が令和9年12月31日までとされていますが、令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」により、特例承継計画の提出期限が1年6か月延長される見通しが示されました。
一方で、特例措置そのものの適用期限については延長されない見込みとされています。そのため、本制度の適用を検討されている場合には、早期に具体的な検討を進めることが重要となります。本稿では、適用期限が迫っている本制度について概説します。
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改正前 |
改正後 |
法人版事業承継税制 (特例措置) |
特例承継計画の提出期限 |
令和8年3月31日※ |
令和9年9月30日 |
| 適用期限 |
令和9年12月31日 |
同左(改正なし) |
※ 特例承継計画の提出期限は、令和6年度税制改正により令和6年3月31日から2年延長
2. 本制度の概要
法人版事業承継税制とは、後継者(受贈者・相続人等)が、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定を受けた非上場会社の株式等を、贈与または相続により取得した場合に、その非上場株式等に係る贈与税または相続税の納税を猶予する制度です。この納税猶予は、後継者の死亡など一定の要件に該当する場合には、納税が猶予されている贈与税または相続税の納付が免除されます。
平成30年度税制改正において、従来の一般措置に加え、10年間の時限措置として特例措置が創設されました。この特例措置は、後継者の自社株式承継時に係る贈与税または相続税の全額が納税猶予され、一定の要件を満たすことで全額免除となる制度です。
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一般措置 |
特例措置 |
| 猶予対象株式 |
総株式数の最大3分の2まで |
全株式 |
| 猶予割合 |
贈与税100%、相続税80% |
贈与税・相続税ともに100% |
| 承継方法 |
複数株主から1名の後継者に承継可能 |
複数株主から最大3名の後継者に承継可能 |
| 雇用確保要件 |
承継後5年間 平均8割の雇用維持が必須 |
未達成の場合でも一定の届出により納税猶予可能 |
3. 本制度の手続き
一般的には次の手続きの流れで本制度の適用を受けることで、贈与税または相続税が猶予、免除(または納付)となります。

4. 留意点まとめ
本制度の適用にあたっては、以下の点に留意する必要があります。
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特例承継計画を令和9年9月30日までに提出する必要があります。
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本制度による納税猶予を受けるためには、対象株式等の贈与または相続を令和9年12月31日までに行わなければなりません。
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本制度の適用時点では納税猶予であり、最終的に猶予税額が免除されるのかどうか、また、後継者の次の世代への承継を見据えることができるか慎重に検討する必要があります。
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本制度適用にあたっては、株式承継時の要件のみならず、適用後も継続して一定の要件を満たし続ける必要があり、期限確定事由に該当した場合には、利子税と併せて、猶予されていた贈与税または相続税の納税が必要となります。
5. おわりに
本稿では、法人版事業承継税制(特例措置)について概説しましたが、上記以外にも留意すべき点は多く存在します。また、本制度の適用が必ずしも最適とは限らず、検討にあたっては別の承継手法も含めて総合的に判断する必要があります。適用の可否や別の承継手法の選択については、個々の状況に応じた慎重な検討が求められるため、専門家等へご相談いただくことをお勧めします。ご不明な点がございましたら、担当者までお気軽にお問い合わせください。
執筆:山下 雄也 yamashitay@yamada-partners.jp