税のトピックス

2026年5月29日

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相続時の国外転出時課税

相続時の国外転出時課税

1. はじめに

国外転出時課税制度は、日本の課税権が海外に移転することにより不当な租税回避を防止する目的で平成27年度税制改正において導入されました。

本制度は、時価1億円以上の「上場株式、未上場株式、投資有価証券、匿名組合契約の出資持分、未決済の信用取引・デリバティブ取引(以下、「対象資産」)」を保有している本人が海外に転出する場合だけではなく、相続や贈与により非居住者に対象資産が移転する場合においても適用されるため、被相続人は日本居住、相続人は海外居住者である場合には注意が必要です。

 

2. 相続における国外転出時課税制度の内容

(1) 制度の概要

国外転出時課税制度は、時価1億円以上の対象資産を保有している一定の居住者が国外転出する場合、時価1億円以上の対象資産を保有している居住者に相続が発生し、非居住者である相続人等が対象資産を取得する場合に、対象資産を時価で売却したとみなして、対象資産の含み益に対して所得税を課する制度です。

相続の際の国外転出時課税制度では、相続人は準確定申告を通じて所得税を申告・納付することになりますが、準確定申告の期限は、相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内とされており、相続税申告の期限と比較して極めて短くなっています。

また、準確定申告の期限までに遺産分割が確定していない場合には、法定相続分に基づいて非居住者が対象資産を取得したものと仮定して準確定申告を行うため、その後、遺産分割が確定した場合には、修正申告または更正の請求を行う必要があります。

(2) 納税猶予の特例

国外転出時課税制度は、売却していない未実現利益に対して所得税が課税されるため、納税資金が不足することも想定されることから、原則5年間(最長10年間)の納税猶予の特例が設けられています。

納税猶予を受ける場合には、準確定申告の期限までに納税猶予を受ける所得税額及び利子税額に相当する担保を提供し、対象資産を取得した非居住者である相続人等全員が納税管理人の届出をすることが必要です。

なお、対象資産を相続により取得した非居住者である相続人等の全員が帰国し、帰国時までに対象資産を保有していた場合、対象資産を相続により取得した非居住者が居住者に対象資産を贈与した場合、対象資産を相続により取得した非居住者が亡くなり、その相続人が全員居住者となった場合は、更正の請求を行うことにより所得税の納税が不要となります。

(3) 減額措置

納税猶予の特例を受けている方は、対象資産の時価が国外転出時課税時と比べて、納税猶予期間中の売却時、納税猶予満了時の方が低い場合には、売却時・満了時の低い金額で所得税を再計算し、所得税を減額することができます。

この減額措置を受けるには、売却日・満了日から4ヵ月以内に更正の請求を行う必要があります。

 

3. おわりに

相続における国外転出時課税制度は、相続税とは別に所得税が課されること、申告期限が短時間であることが大きな特徴です。

海外在住の相続人がいる場合には、被相続人の保有資産内容によっては相続開始直後から迅速な判断と対応が必要となります。

本制度は見落とされやすい一方で、適切な生前対策や遺産分割の設計によって適用を回避または軽減できる余地があり、相続税のみならず国外転出時課税も含めた税務対策を行うことが重要ですので、早めに専門家へご相談いただくことをお勧めします。

 

執筆:柿本 幸信  kakimotoy@yamada-partners.jp

 

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