税のトピックス

2023年12月4日

  • 所得税

国税庁発表 所得税調査で9,041億円の所得申告漏れを把握

国税庁発表 所得税調査で9,041億円の所得申告漏れを把握

国税庁は、所得税等の調査についてまとめた「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を公表しました。この調査によると、国税庁が今年6月までの1年間に行った所得税の調査等件数は637,823件(対前年比6.3%増)と前年より増加しています。

 

実地調査の件数は46,306件(同47.4%増)、実地調査における申告漏れ所得金額は5,594億円(同33.3%増)、同追徴課税は1,015億円(同26.2%増)となり、いずれも前年より大幅に増加しています。

 

実地調査における1件当たりの申告漏れ所得金額は1,208万円(同9.6%減)です。1件当たりの事業所得の申告漏れ所得金額が高額な業種をみると、「経営コンサルタント」が3,367万円で最も多く、2位は「くず金卸売業」(2,483万円)、3位は「ブリーダー」(2,075万円)となりました。この他、「焼肉」「タイル工事」、「冷暖房設備工事」と続いています。

 

国税庁では、インターネット取引を行っている個人に対して、積極的に調査を実施しています。

シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する調査結果を見ると、調査件数は1,324件。1件当たりの申告漏れ所得金額は1,508万円(同9.1%増)、1件当たりの追徴税額は320万円(同20.3%増)となりました。

調査件数を取引区分別に見ると、ネット通販等472件 、シェアリングビジネス350件、その他290件、デジタルコンテンツ100件、ネット広告90件、ギグワーカー22件となっており、新しいビジネスモデルに関する調査を強化している様子がうかがえます。

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出典:国税庁「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」

 

また、国税庁では、経済社会の国際化に適切に対応していくため、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、積極的に調査を実施しています。

海外投資等を行っている個人に対する調査結果を見ると、申告漏れ所得金額の総額は1,036億円(同37.4%増)、1件当たりの申告漏れ所得金額は過去最高の3,720万円(同0.8%増)となっています。

いわゆる富裕層に対しては、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に置き、積極的に調査を実施しているそうです。

1件当たりの申告漏れ所得金額は3,331万円(同11.6%減)となっており、所得税の実地調査全体の金額(1,456万円)と比較すると2.3倍となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は過去最高だった昨年をさらに上回り980億円(同16.8%増)となりました。

特に、海外投資等を行っている富裕層に限定すると、1件当たりの追徴税額は1,068万円となり、実地調査全体の3.9倍となっています。

国税庁では「経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報などを効果的に活用し、積極的に調査を実施」しているとしており、今後も海外投資等をした富裕層に対する調査は重点項目となりそうです。

 

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