1. はじめに
2025年12月19日に与党税制改正大綱が公表されました。令和8年度税制改正では、「強い経済」「世界で輝く日本」の実現を目指し、その基盤となる持続的な成長と公平な負担の仕組みづくりが進められます。個人向けの対策として、物価高による家計の負担増を防ぐため、所得税の基礎控除や給与所得控除などが物価に応じて調整される仕組みが導入され、暮らしの下支えが図られます。
さらに、企業向けの対策として、投資と賃上げの好循環を生み出すため、設備投資や研究開発を後押しする税制が強化され、中小企業の賃上げ促進策も再設計されます。公平性の確保に向け、国際課税や高所得層への負担適正化が進められ、税体系の歪みの是正が図られます。
今回は、個人に関する改正のうち、今後の資産形成に影響するものとして 「貸付用不動産の評価方法の見直し」 「小口化不動産の評価方法の見直し」 「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し」 「暗号資産の分離課税化」 についてご案内いたします。
2. 貸付用不動産の評価方法の見直し
これまで、賃貸用不動産の市場価格と通達評価額の乖離を利用した節税が問題視されてきました。現行制度では 「財産評価基本通達総則6項」 により個別対応で是正していましたが、予測可能性に欠けるとの批判もありました。そこで、課税の公平性と予測性を確保するため、課税時期前5年以内に取得・新築した一定の賃貸用不動産について、課税時期における通常取引価額で評価します。

3. 小口化不動産の評価方法の見直し
近年、賃貸不動産を小口化し少額から投資できる商品が普及しましたが、これらは、上記貸付用不動産と同様に、市場価格と通達評価額の大幅な乖離を利用した節税が問題視されてきました。改正後は、取得時期に関係なく、課税時期の通常取引価額で評価されます。
| 改正前 |
改正後 |
| 不動産の通達評価額 |
① 適正な処分価格・買取価格・売買実例・定期報告書の価格等を参酌して求めた金額 ② ①に該当するものがない場合には、貸付用不動産の評価方法に準じて評価 |
4. 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し
従来、給与や不動産所得は累進課税で税率が上がる一方、配当や株式譲渡、長期保有不動産の譲渡所得は一律15%課税であり、高所得者ほど所得に占める株式等の譲渡所得や配当所得の割合が高い傾向にあるため、税の負担率が低くなる逆転現象が生じていました。この不公平を是正するため、令和5年度改正で導入された「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化に係る措置」の追加課税措置がさらに強化されます。
| 改正前 |
改正後 |
| ( 基準所得金額 - 3.3億円 ) × 22.5% - 基準所得税額 |
( 基準所得金額 - 1.65億円 ) × 30% - 基準所得税額 |
5. 暗号資産の分離課税化
現在、暗号資産の所得は総合課税(最大55.945%)で課税され、株式などの分離課税(20.315%)と比べて負担が重いことが課題でした。本改正では、暗号資産から生じる所得について分離課税に変更されます。
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一定の特定暗号資産の譲渡益は20.315%で課税し、損失は3年間繰越控除が可能です。
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所有する特定暗号資産の処分時期の判断が重要となります。
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適用は金融商品取引法改正施行年の翌年1月1日以後の譲渡です。
| 改正前 |
改正後 |
| 総合課税・最大55.945%・繰越控除無し |
分離課税・20.315%・3年間の損失繰越控除 |
6. 税制改正解説のご案内
弊社ホームページでは、今回ご案内していない令和8年度税制改正項目についても、詳細な解説を掲載しております。ぜひご覧ください。
2026年度(令和8年度)税制改正のポイントと解説
執筆:堤 健太 tsutsumik@yamada-partners.jp